[Poison] Midnight in the Garden of Good and Evil
『真夜中のサバナ』

【Part 2】

私は読み始めて50ページ以内に人が殺されないミステリは投げ出します。「人が殺されない」というのは言葉の綾で、真犯人、密室、動機、誘拐など、大きな謎であれば何でもいいのです。それらの解決がゴールなので、こちらの焦点も定まります。同様に始まって30分以内にゴール(テーマ)が提示されない映画は嫌いです。この映画は殺人事件が起るまでに34分かかっています。長いと云わざるを得ません。製作者達が観客をどこに誘導しようとしているのか判らず、苛々してしまいます。「全体が長いんだから、イントロも長くていいだろう」という論理は成立しません。こちらの忍耐力には限界があるからです。

原作は発表当時長期ベストセラーだったそうです。脚本家が相当手を加えたらしいので、どこまで原作の味なのかは不明です。例えば、John Cusackが演じるリポーターは原作には無いそうです。狂言廻しが必要だったんでしょうね。しかし、殆ど個性が感じられないので、これは脚本家の落度でしょう。

Kevin Spaceyは、いつものことですが何やら仮面をかぶったような芝居で、リアリティが感じられません。後半は彼の裁判がメインになるわけですが、彼がホモだろうが、若い男をどう殺そうが、我々観客にはどうでもいい感じです。我々と無縁の大金持という設定なので、あまり共感、同情が湧かないのです。

透明犬を散歩させる男とかハエを飼っている男は面白いのですが、映画全体の中ではそこだけ滑稽で、浮いているように思えます。女性ばかりのブリッジ・クラブが出ますが、車から数人が一斉にドアを開けて出て来るような、サイレント喜劇みたいなことをやっています。私は一本の映画の中では文体(スタイル)が統一されているべきだという立場なので、こういう演出は認めません。

また、私はゲイ・ボーイは見たくない方で、特にこの映画に出て来る男は美しくも若くもなく、何でこんな人物を観なくちゃならないのか、大きな迷惑です。この女装の男が舞踏会に闖入し踊り出すのをJohn Cusackが宥めすかして帰らせます。この時、踊るために同席の人に預けたハンドバックを忘れて手ぶらで帰っちゃいます。ハンドバッグを忘れる“女性”というのはいません(よほど動転していない限り)。これは監督とスクリプターのミスでしょう。

上のような奇態な人物達とヴードゥー的要素によって超現実的映画を目指したのなら、では、ありきたりの法廷劇になぜあのように時間をかけるのか?ほぼ40〜50分も裁判があるのです。

「時間の無駄だった」という映画にもどこかいいところ、面白いところがあるものですが、この映画には皆無です。珍しい映画です:-)。

(May 12, 2001)





Copyright ©  2001-2011   高野英二  (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.