[Poison] The Member of the Wedding
(未)

【Part 2】

多分、この映画を観る方は少ないだろうという想定で、物語の後半も書いちゃいましょう。

Julie Harrisは家出したものの、父親のお金をたった$11.00盗んだだけなのでどこへも行けず、夜の町をうろうろします。バーのウインドウから兄に似た軍人を見掛け、店に入って話しかけコークか何か飲み物を貰います。軍人は店の裏庭でJulie Harrisを抱き締めようとし、彼女は手近のガラス器で軍人を殴り、逃げ出します。

家へ帰ると、父も家政婦も誰もいません。隣家のBrandon De Wildeに呼びかけると、父と家政婦が窓から顔を出し、少年が病気であることを告げます。

少年は亡くなってしまいます。次のシーンではJulie HarrisもEthel Watersも喪服姿。驚いたことにJulie Harrisの父は転居することに決めたようで、もう家の中はほぼ空で、引っ越し職人たちがどんどん家財道具を運び出しています。Julie Harrisは「また会おうね」とEthel Watersに云って出て行きますが、Ethel Watersはそんなことはもうないだろうという表情で、一人寂しく涙をこらえて歌をハミングします。もう、少年・少女と彼女の夏は永久に戻って来ないのです。

白黒の撮影はほぼ申し分ないのですが、Julie Harrisが夜さまよう際の疑似夜景は明る過ぎて減点です。

私は『エデンの東』の時から、Julie Harrisはあまり見たくない女優だと思っていました。私好みのタイプでないというのが最大の理由ですが、あの映画の封切り当時から(役柄に反し)「何か老けてる」と思っていたのです。主に初々しくない皮膚からの印象でした。今度、この映画を観るまで、当時の彼女が29歳だったとは知りませんでしたが、「やっぱり!」と思っただけで意外ではありませんでした。あんなギスギスした不感症っぽい女性を兄弟で取り合うなんて、とても信じられない映画でした。しかし、『エデンの東』はJames Dean(ジェイムズ・ディーン)の映画でしたから、彼女の存在などどうでもよかったのですが。

この映画は彼女の演技力を見せつけてくれるもので、確かにElia Kazan(イーリア・カザン)が惚れ込むだけのことはあると納得しました(それでもなお『エデンの東』の彼女は、やはりミスキャストだと思いますが)。12歳の少女がこんな風に悩み、喋るだろうか?という疑問はありますが、それは脚本と演出のせいでもあるでしょう。Ethel WatersとBrandon De Wildeは満点です。

なお、TCM(Turner Classic Movies)の解説によれば、この映画の監督Fred Zinnemann(フレッド・ジンネマン)はJulie Harrisに「舞台での芝居は忘れてくれ。これは映画なんだから」と云ったそうです。そう云えば、'Carmen Jones'『カルメン」と'Porgy and Bess'『ポギーとベス』の二本のオペラを映画にしたOtto Preminger(オットー・プレミンジャー)は逆でした。彼は舞台の良さを活かすように“引き目”の(ワイドな)サイズを多用し、滅多にクロースアップを使いませんでした。Fred Zinnemannはアップを多用しています。対照的です。

(February 03, 2007)





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