[Poison]

Macon County Jail


【Part 2】

ロサンジェルスを発った後、途中で何泊かしないと南部には来れない筈ですが、そういう描写はなくいきなりMacon Countyに到着してしまいます。この辺は脚本、監督、編集のミスでしょうね。テキサスあたりならこれでもいいのですが、雰囲気としてはアーカンソー、ミシシッピ、ジョージア辺りの感じですから、途中に何回か夜のシーンがないといけません。

Ally Sheedyが留置場に入る原因となったガソリン・スタンドでの騒ぎですが、ここには大きな齟齬があります。彼女は「警察に電話したいんだがお金がない」の一点張りで、スタンドの男の同情心に訴えようとします。男は「外の電話を使え」の一点張り。彼女は「だから、お金がないんだってばさってば!」と怒鳴ります。しかし、世界共通で警察と消防(救急)の電話は無料ですから、彼女が大騒ぎすることはないのです。

また、やって来た保安官補はやたら高潔な男なのか、Ally Sheedyが"goddamn"とか"hell"とか悪態をつくのを嫌い、彼女が三度目に悪態をついた時に逮捕を決意します。しかし、南部こそ卑語、俗語、悪態、罵りの本場であり、特に保安官(シェリフ)や保安官補などは典型的な汚れた口の持ち主です。私は元判事、元将軍、元弁護士などと日々ゴルフをしていますが、彼らの自分の失敗に対する罵声はひどいものです。こんな神経質な保安官補など南部にいるわけがありません。

別な見方としては考えられなくもないのは、深南部は"Bible belt"(バイブル・ベルト)とも呼ばれるほどで、原理主義のクリスチャンも多いところです。この保安官補がその一人ということも考えられます。さらに、深南部は封建的で男尊女卑の傾向がありましたから、女性が卑語を連発すれば、売春婦と同じランクに見られるということもあり得ます。

しかし、私の解釈のトップは、脚本家が南部の保安官や保安官補の実態を知らなかったというものです。

ラストで立て籠もった納屋からAlly Sheedyが無事逃げ出せるという設定も、随分都合よく出来ています。

(November 01, 2003)





Copyright ©  2001-2011   高野英二  (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.