[Poison] Cool Hand Luke
『暴力脱獄』

【Part 2】

囚人達の言葉の訛りで、これが“南部もの”であるのは間違いないのですが、どの州とも特定出来ません。George Kennedyの親戚がアトランタにいるらしく「二人でアトランタへ行こう」という台詞があることから察するとジョージア州のどこかでしょうか。撮影がカリフォーニアで行なわれていることもあって、風景から推測することも出来ません。

原作を書き、脚本の共同執筆家でもあるDonn Pearce(ドン・ピアース)は、二年間チェイン・ギャングとして日々を送ったそうで、その経験・知識が最大に活かされたケース。転んでも只は起きないという感じですね。

主人公には当初Telly Savalas(テリィ・サヴァラス)が予定されていたそうですが、彼は当時ヨーロッパにいて飛行機に乗ることは拒否。製作者達は彼が船で戻って来るまでは待てず、Paul Newmanが二番手として交渉されたとか。Telly Savalasだったら、大分映画の印象が変わったことでしょう。

この映画で最大の疑問は、この抜け目無い主人公が何故二度も脱走に成功し、二度とも逮捕されてキャンプに送り返されて来たか?です。彼は小川を渡り、川を泳ぎ、宙にあるワイヤーを伝ったりして、完璧に犬の追跡をまく逃走の仕方をしています。彼がどう逮捕されたかは一度だけ語られますが、あまり納得出来る経過ではありません。彼が先ずやらねばならないことは、シャツとズボンを盗むことであり、次に車を盗むことだった筈なのに、脇目も振らずに走っています。どうも、他の囚人達が尊敬するほどスマートではなかったようです。Telly Savalasなら、あまり頭が切れそうでもないので納得出来たかも知れませんが:-)。

三度目の脱走でも、意外に早くトラックを捨ててしまい、徒歩に切り替えています。実際には大して歩きもしないで見捨てられた教会に入り、神様との対話を始める始末。結局、逃げ出しはするものの、どこへ行くという当ても無い人間で、潜在的に捕まることを望んでいる感じに見えます。そこに何か寓意があるのなら別ですが、私には割り切れない結末に思えます。

常にサングラスをかけ、銃で何かを殺すことを欲している看守がいます。彼のミラー型サングラスに映る光景が折りにふれてとらえられていて、何か非常に意味有りげです。少なくとも、Paul Newmanとこの男との一種の対決が期待されます。三度目の脱走に成功することが、この冷酷な看守に勝ったようにも見えますが、実は看守達全体を騙した結果に過ぎず、「勝負あった」とは思えません。ですから、最後にPaul Newmanが笑ってごまかそうとした時にあっけなくこの男に射殺されてしまうのは、単に一方的であって欲求不満が残る因となります。看守達は「三度目には殺す」と予言していたわけですから、それを無視したPaul Newmanも馬鹿げて見えます。

George KennedyがPaul Newmanの思い出として、彼がいつも笑っていたということを語ります。確かに、映画の冒頭で逮捕された時も愉快そうに笑っていたのが不思議でした。その後も不敵に、あるいは楽しそうに、数え切れないぐらい彼の笑い顔が登場します。笑って死んで行ったように見えるのもユニークです。映画の最後にそれら笑いの全てがリプレイされます。爽やかな個性と、その不屈の闘志を謳い上げるように。不屈の闘志は分るのですが、彼が再逮捕される原因が曖昧なので、作者達が「不屈の闘志」を描くためにだけ、彼をキャンプに連れ戻したようにしか見えないのが残念です。

(June 24, 2001)





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