[Poison] My Louisiana Sky
(未)

【Part 2】

残念なのは主演のKelsey Keelがあまり可愛くないことです。演技も別に天才的というわけでもありません。まあ、南部の田舎の腕白娘には相応しいのですが。

ヴェテランShirley Knightはさすがにいい味を出しています。叔母を演じるJuliette Lewisはエレガントな衣装ばかり着て綺麗ですが、物語全体から一寸浮いているかな?という感じ。彼女が高給を得ている仕事が何なのかは謎です。

障害者夫婦はどちらも自然にしつこくなく演技していて素晴らしい。少女の母親役Amelia Campbellは、中年女性の風貌で精神年齢6歳の少女を演じるという難題に取り組み、見事に責を果たしています。父親役Chris Owensもうるさくない程度に吃り、極めて軽度の障害者をうまく演じています。

この映画には悪人は出て来ません。もちろん、知的障害者の母を持つ主人公を哀れむ(半ば嘲る)同級生や、ハリケーン来襲を予言する少女の父親に対し「馬鹿の云うことなんか真に受けられるか!」という同僚は出て来ます。

この映画の立場は以下のようなやりとりで分ります。
祖母「人々は彼ら【註:少女の両親】と違うことが気になるの。違うことは悪いことじゃないわ。違うのはただ違うだけなのよ」
少女「でも…」
祖母「でも、なんなの?」
少女「でも、ママが人と違っていなかったらよかったと思う」
祖母「時々、わたしもそう思う」

つまり、映画製作者たち(特に脚本家)は、単純に障害者援護の物語にするつもりはないわけです。障害者にあたたかい視線を注ぎつつ、その健常者の家族の辛さも無視していません。フェアな態度と云うべきでしょう。

ハリケーンの前兆として、鳥の大群が夜っぴて鳴き続け、朝になると去ってしまい、牛たちが不安げに固まって立ち尽くしている様が描かれます。予算がないせいでしょうが、丘や農場を襲うハリケーンの描写はなく、森の中(狭い範囲)や軒先の風雨だけで済まされています。散水車数台と巨大扇風機一台レンタルしただけという感じ。これは残念です。ま、製作者たちも当然残念でしょうけど。

観終わって考えても'My Louisiana Sky'というタイトルが何を意味していたのか不明です。詩的で叙情的な映画を期待させる題ですが、ルイジアナらしい平坦な大地の上に広がる青空とか夕焼けが出て来るわけではありません。それもその筈、これはカナダで撮影されているのです。南部らしさが出るわけがありません。

(April 02, 2007)





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