[Poison] The People vs. Larry Flynt
『ラリー・フリント』

【Part 2】

現存する人物についてここまで描くというのにはびっくりします。ま、当人から抗議されたら「あなたは表現の自由を主張していたではないか?」と自己撞着を指摘すればいいのでしょうが。

Larry Flyntの弁護士を演ずるEdward Norton(エドワード・ノートン)は、正攻法だし、弁論も雄弁ではなく、どう見ても助けになりそうもありません。こんな人物をずっと雇っているというのも、いささか驚きです。

Larry Flyntが妻を愛する姿には打たれるものがあります。自堕落で麻薬中毒、AIDSまで背負い込んでも彼女を愛していて、雑誌社重鎮が彼女に握手もしないと聞くと「全員クビだ!」と宣言したりします。しかし、彼女が家の廊下(浴室の床?)で溺れ死ぬのは異常です。車椅子のLarry Flyntのために、床は平らになっているべき筈で、人間が溺れるほどの凹みがあるとは思えません。いずれにせよ、彼女の死後もヴィデオで彼女を映し出して懐かしむというのは、この変人にしては思いがけない行動なのでいささか感動させられます。

原題の"People vs. Larry Flynt"という表現ですが、最高裁まで行った場合のみ"People vs. XXXX"になるのかと思い、弁護士のGeorge(ジョージ)に質問しました。この云い方はそう簡単に定義出来ないようです。彼の説明によれば、「犯罪行為の裁判は州によって呼び方が変わる。例えばカリフォーニアだと"the People (of the State of California) vs. O. J. Simpson"となるが、ミシシッピ州では、それが巡回法廷の場合"the State of Mississippi vs. Bylon De La Beckwith"、市の法廷で行なわれれば"the City of Meridian vs. Eiji Takano"、もし一件が連邦法廷に移った場合"the United States of America vs. Microsoft Corporation"…などとなるそうです。個人が争う民事訴訟の場合は、映画の題名のように'Cramer vs. Cramer'と当事者の名前で呼ばれます。

(May 15, 2001)





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