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Runaway Jury

『ニューオーリンズ・トライアル』


[Poster]


・原題をクリックするとIMDbの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:October 17, 2003
監督:Gary Fleder
地域:ルイジアナ州ニュー・オーリンズ
出演:John Cusack、Gene Hackman、Dustin Hoffman、Rachel Weisz、Bruce McGillほか
範疇:原作もの、スリラー、法廷もの、陪審員の買収工作

私の評価 :☆☆

【Part 1】

'The Firm'『ザ・ファーム/法律事務所』(1993)、'The Pelican Brief'『ペリカン文書』(1993)、'The Client'『ザ・クライアント/依頼人』(1994)など、数々の法律ミステリの作家John Grisham(ジョン・グリシャム)原作の映画化。小説の日本語版題名は『陪審評決』(新潮文庫)。

アメリカの裁判は、被告の希望によって陪審員による評決か裁判官による判決かを選べます。'12 Angry Men'『12人の怒れる男』で御存知のように、陪審員は12人。先ず、かなり大勢の陪審員候補が集められ、原告側と弁護側が合意に達した人物だけが選ばれます。その12人がどのような主義・主張・偏見を持っているかは、判決に重大な影響を及ぼしますから、原告側・弁護側双方、非常に慎重に審査します。12人が選ばれても、後に彼らの中の何人かが不適格と分ったり、病気や怪我などで脱落せざるを得ない場合に備え、2名程度がスタンバイ要員としてずっと裁判を傍聴します。裁判が終わるまで陪審員はホテルやモテルに缶詰めになります。新聞やTV、親戚・友人などの意見に影響されないように隔離されるわけです。

New Orleans(ニュー・オーリンズ)の大企業オフィスで狂人が半自動機関銃を乱射し、若い夫であり父であったビジネスマンをはじめ11人が撃たれて死ぬ。犯人も自殺する。

二年後、若いビジネスマンの未亡人は銃器メーカー社長を相手取って訴訟を起す。「安易な銃の販売が犯罪の原因となった」という理由で、多額の賠償金を要求していた。銃器メーカーにとって、この裁判に負ければ全米的に銃規制が強まる恐れがあり、メーカー存続の危機ともなりかねない。

銃器メーカー社長は陪審員操縦のプロGene Hackman(ジーン・ハックマン)を雇う。彼は数十人の部下とともに、New Orleans中心部に多数のコンピュータ、電話逆探知装置などを備えた参謀本部を設営する。彼の主な仕事は、先ず陪審員各個人の過去や性癖を調べ上げ、恫喝・買収の可否を探る。次に、法廷の模様を盗視・盗聴し、弁護士の耳の後ろにセットした受信機を介してGene Hackmanが弁護士を遠隔操作する。このシステムによって彼は幾多の勝利を獲得していた。

告発側の代理人はDustin Hoffman(ダスティン・ホフマン)。彼も心理学者を陪審員コンサルタントとして雇い、陪審員選考に臨む。陪審員第9番に選ばれたのはJohn Cusack(ジョン・キューザック)。彼は陪審員に選ばれたことを恋人Rachel Weisz(レイチェル・ワイズ)に伝え、二人は祝杯を上げる。

いよいよ裁判が始まる。John Cusackは目と耳を最大限に使い、陪審員たち個々の性格、主張、弱みなどを掴み、こっそり宿舎を抜け出しては恋人Rachel Weiszに知らせる。Rachel WeiszはGene HackmanとDustin Hoffmanの双方に電話し、「判決をコントロール出来る。報酬は10億円」と提示する。

Gene HackmanはJohn Cusackを疑い、彼の部屋のMacintoshコンピュータから全てのデータを盗む。しかし、肝心の事件関係のデータがない。再度、侵入した部下たちはJohn Cusackの部屋を燃してしまう。次にRachel Weiszの住み処が突き止められ、ここへもGene Hackmanの部下が出向き、彼女を痛めつける。Rachel WeiszはGene Hackmanに電話し、「報酬は15億円」と値を吊り上げる…。

John CusackとRachel Weiszの連携プレイはどう進展するのか?百戦錬磨のGene Hackmanを手玉に取れるのか?判決は一体どうなるのか?撮影・編集もうまく、二時間を厭きさせないで観せてくれます。

原作では被告は銃器メーカーではなくミシシッピ州のタバコ会社だったそうです。しかし、タバコ訴訟では'The Insider'『インサイダー』(1999)といういい映画が存在しますし、既にタバコ会社の敗訴が確定している古いネタになっていますので、変更は止むを得なかったでしょう。タバコは買って吸うのが当人で、銃は第三者(狙撃者)が介在するという違いがあり、問題が複雑化するのが難点ですが…。

Gene Hackmanは黒幕の大物を堂々と演じています。Dustin Hoffmanは律儀に法に則って思考・行動する直線的な良心派の法律家で、これもハマっています。なお、二人は若い頃ニューヨークで演劇を共に学んだ仲だったのですが、その後ただの一度も共演するチャンスがなく、スクリーン上で顔を合わせるのはこれが初めてだそうです。二人が対決するシーン(わずか一場面)の撮影には、「一目見よう!」と撮影クルーの上から下までほぼ全員が詰め寄せたとのこと。

John Cusackが買い物をする場面で、黒人女性がフランス語を喋ります。これはルイジアナ州が長くフランス領だったため、この州にはフランス語を話す白人、黒人が多いということを象徴しています。

New Orleansの風景としては、バーボン・ストリート、フレンチ・クォーター、ジャクスン広場、スーパードーム、有名な路面電車などが出て来ます。

【参考】
アメリカの刑事司法制度について--陪審員の選定手続
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgj9369/mystery/Crime(11).htm

(October 17, 2003)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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