公開：1938
監督：William Wyler
地域：ルイジアナ州ニュー・オーリンズ
出演：Bette Davis、Henry Fonda、George Brent、Margaret Lindsay、Donald Crispほか
範疇：戯曲の映画化／ドラマ／ロマンス／黄熱病

私の評価 ：☆

【Part 1】

この映画は'Gone With the Wind'『風と共に去りぬ』(1939)の前年に公開されています。小説『風と共に去りぬ』はベストセラーでしたし、映画のスカーレット・オハラ選びが進行中という段階で、映画ファンが待ち切れない思いでいた頃です。スカーレットのオーディションに落ちたBette Davis（べティ・デイヴィス）がこの映画で初の大作主演に挑み、アカデミー主演女優賞を獲得しました。こちらは白黒で、あまり派手な映画ではないのですが、『風と共に去りぬ』にかなり似通った面があります。

1852年、南北戦争前のニュー・オーリンズ。"Southern belle"（南部の令嬢）Bette Davisは銀行家Henry Fonda（ヘンリィ・フォンダ）と婚約していた。彼女の家で婚約披露の午後のパーティが開かれていたが、当のBette Davisがいない。彼女は馬で散歩に出ていたのだ。戻って来ると、「御免なさい。若駒に手を焼いてしまって。でも、若駒が生意気になったらすぐ躾けないと駄目になるので…」とのたまう。

パーティが終るとBette DavisはHenry Fondaの銀行へ行く。舞踏会のためのドレス選びの日で、彼も一緒に来てくれる筈だった。しかし、彼は重要な案件で役員たちを説得している最中だった。南部の女性は銀行に入ったりしないものだったが、Bette Davisはずかずかと入って行く。Henry Fondaは「とても抜けられない」と謝る。Bette Davisは「来てくれる約束だったのに」とむくれる。

社交界デビューの舞踏会では結婚前の女性は白いドレスを着るのが不文律だった。Bette Davisも白いドレスを試すが、陳腐で気に入らない。偶然赤いドレスが目に止まる。叔母やドレス・ショップのマダムも反対するが、Bette Davisは赤いドレスに決める。

夕刻、Henry Fondaがやって来るが、赤いドレスを見て目を剥く。「明日夜10時までに白いドレスを用意しないと、舞踏会にはいかない」と宣言する。

しかし、翌日Bette Davisはドレスを変えていなかった。舞踏会は男性の黒、女性の白で満ちていた。そこへ真紅のドレスが割って入る。無分別を咎めるように、人々は踊りを止める。たまりかねてBette Davisは家に帰ろうとするが、意地になったHenry Fondaは彼女を抱えて踊り続ける。

その夜、Bette Davisを送って来たHenry Fondaは「さよなら」と云う。それは婚約解消を意味していた。そのまま、彼はニュー・オーリンズを去った。

一年後。Bette Davisは自閉症のように家に閉じこもり、ひたすらHenry Fondaの帰りを待っていた。ある日、ニューヨーク支店からHenry Fondaが戻って来るという知らせが入る。彼女は自分の荘園で彼を歓迎する準備にいそしむ。Henry Fondaのニューヨーク土産は、彼が結婚した東部娘だった！折しも、ニュー・オーリンズは黄熱病の流行に見舞われ、ニュー・オーリンズの砲声が聞こえて来る…。

Bette Davisの乗馬服は裾を膨らましていないだけで、エレガントなドレスと云えるようなものです。彼女はドレスの裾を鞭で器用に巻き上げスタスタと歩きます。これは一見の価値があります。

ドレス・ショップで着替える場面で、ドレスの内側を見せてくれます。提灯みたいに輪っかの仕掛けをまとい、その上からドレスを着ます。提灯のように畳めるので、ひざまずく時も問題ないわけです。

プランテーションに客を招いての晩餐で、Bette Davisが「ガンボのお代りはいかが？」と云います。ガンボはニュー・オーリンズ名物料理の一つで、スパイスの効いたスープです。チキンやソーセージを入れる場合もありますが、シーフード・ガンボがポピュラーです。剥きエビ、カニ、生牡蛎、帆立、イカなどを野菜と一緒に煮込みます。どのガンボでもスライスしたオクラを入れます。米を一緒に煮込む場合もあります。

拳銃による決闘が出て来ますが、ヨーロッパへの窓だったニュー・オーリンズですから、西欧の伝統に則っています。「バーではレディの名を口にしてはいけない」とか、紳士・淑女には色々ルールがあったようです。

叔母の役のFay Bainter（フェイ・ベインター）アカデミー助演女優賞を獲得しました。医師のDonald Crisp（ドナルド・クリスプ）は'How Green Was My Valley'『わが谷は緑なりき』(1941)で一家の父を演じた俳優です。

(March 16, 2002)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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