[Poison]

A Painted House

『ペインテッド・ハウス』

【Part 2】

タイトルにもなっている「塗られた家」ですが、小説では読者を騙せたかも知れませんが、映画になると無理があるのが分ります。ペンキを塗っていたのは出稼ぎ労働者の中の数人だったわけですが、彼らは昼間は汗みどろになって働いているのですから、夜はバタンキューではないでしょうか?雨の日でもないと昼間はペンキ塗りなど出来ませんが、雨の日に家の外を塗ることは不可能ですし、昼間隠れてやることは出来ません(すぐ見つかってしまう)。

そもそも、勝手に家にペンキを塗られて家長のScott Glennが怒らないのが妙です。彼がテント小屋や納屋を調べれば、誰がペンキを持っているか、すぐ判るでしょうし。

北部から来た女性がアイス・ティーを出され、「冷えた紅茶なんか飲めますか!」と馬鹿にします。いつ頃から南部にアイス・ティーが定着したのか知りませんが、テキサス東部からフロリダ、サウス・キャロライナにかけて(バイブル・ベルト)、レストランの多くでアイス・ティーを注文出来ます。一般の家でも通年毎日大量のアイス・ティーを製造し、冷蔵庫で冷やします。特に"Deep South"と呼ばれる諸州でアイス・ティーは甘みを増すそうです。

アメリカ北東部と西海岸の知人に聞いてみましたが、北東部のメイン州ではアイス・ティーが必要なほど暑くなる気候ではないので、レストランのメニューにはないそうです。西海岸の知人はアメリカ全土を股にかけて仕事している人ですが、「ワシントンとニューヨークでは、アイス・ティーは間違いなく注文できます。ボストン、シカゴ、デトロイトなどの北部都市も同じです。あの感じではほぼ全米で飲めると思います」とのこと。ただし、北部のは甘くしてないそうです。

料理研究家によるウェブサイト'Histrory of Iced Tea and Sweet Tea" (http://whatscookingamerica.net/History/IcedTeaHistory.htm)によれば、「アメリカには二種類の"iced teas"がある。唯一の違いは砂糖が入っているかどうかである。南部人は甘い"iced tea"を好み、浴びるように飲む。南部では"iced tea"は夏だけのものではなく、一年を通して食事の際に供される」そして、1884年に北部で発行された料理本に、既に"ice tea"なるレシピが掲載されていたそうで、「当時、この飲み物は南部特有のものではなかった」と解説しています。

原作者John Grishamの「1960年代には北部人から蔑まれたアイス・ティー」という説は、いささか事実をねじ曲げているように思えます。

(December 10, 2003)





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