[Poison] The Grass Harp
『グラスハープ/草の竪琴』

【Part 2】

主役についてはもう触れましたので、脇役達の出番。シェリフのJoe Don Baker(ジョー・ドン・ベイカー)は、身なりも構わず、常にペットの雄鶏を助手席に乗せています。これが可笑しい。

15人の子持ちというMary Steenburgenの存在も可笑しい。そんな多産系にはみえませんが。

牧師を演じるCharles Durning(チャールズ・ダーニング)はMary Steenburgenの募金活動をシェリフと共に妨害しますが、ちゃっかりお金を盗んでしまいます。牧師にあるまじき人物で、これも可笑しい。

Jack Lemmonが唄の弾き語りを聞かせますが、あの曲は自作自演だそうです。

Piper Laurieに忠実な女中は、「自分は黒人ではなくインディアンだ」と主張し、「リンカーンも黒人とインディアン、白人の混血だ。誰でも知ってる事実だわよ」などと真面目な顔で云います。煙草を勧められれば、ごっそり抜き取ってしまう厚かましさも可笑しい。

Patric Williams(パトリック・ウィリアムズ)による音楽は甘く、郷愁を誘ってとてもいいのですが、これを「草がハープを奏でているのを聞く」シーンに必ずかぶせた演出は疑問です。確かに風の音というのは録音が難しく、そのままだと単なるノイズになってしまいます。しかし、「草の音」がテーマの映画なのですから、何とか擬音かシンセサイザーでいい音を創り出せなかったものでしょうか?音楽を使うのは、ちと怠惰です。

アメリカの映画評を読むと、どれもこの映画に否定的です。「お話が他愛ない」とか、「Piper Laurieの少女趣味が大人気ない」、「どのキャラクターもすぐに忘れ去るだろう」とか、いずれもこの映画をまともに取り扱っています。これはまともな映画ではなく「いい役者を集めてわいわい楽しんだ映画」と云うべきで、それに乗れるか乗れないかだと思います。私は砂浜で思いがけず綺麗な貝を拾ったような喜びを味わいました。

私が若く夢もチボーもあった頃、一つだけ映画の企画がありました。それは当時(1960年代)の日本映画の脇役を一杯集めて、彼等を国会議員に仕立て、全員にハチャメチャな言動をさせるというものでした。私の政治不信がテーマですが、要は脇役オンパレードのエネルギーを結集したら面白いだろうと思ったのです。しかし、こちらがぐずぐずしているうちに、私の好きな俳優達がどんどん亡くなってしまい、この企画はおじゃんになりました。

この『グラスハープ/草の竪琴』は私の企画ほどスケールが大きくありませんが:-)、でもかなり親近感を抱きます。私がこの映画を評価する理由です。

(July 06, 2001)





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