【Part 2】
家族と一緒に暮らしている娘Victoria Spiveyが養女なのか親戚の娘なのか他人なのか、よく分りません。踊り子Nina Mae McKinneyの魅力は格別ではありますが、しかしVictoria Spiveyも結構美しいので、彼女をほっぽらかしてNina Mae McKinneyに夢中になる理由がよく理解出来ません。波止場の場面でDaniel L. Haynesはニタニタしているだけなので、彼が心底Nina Mae McKinneyの虜になったとは伝わって来ないのです。'West Side Story'『ウエストサイド物語』のダンス会場でお互いに魅せられたTonyとMariaを描いたような、ああいう処理が必要だったでしょう。
説教師となった後も、Daniel L. Haynesは数回Nina Mae McKinneyにフラフラとなります。Nina Mae McKinneyは悪女というより“悪魔”という感じでDaniel L. Haynesにつきまとい、彼の人生を狂わせます。見ていて歯がゆい感じですが、実際にNina Mae McKinneyのような魅力的な娘に言い寄られたら、どんな男性も狂うかも知れません。
家族の半年間の収入を博打に使うという軽薄さも理解出来ないところです。金を失ったあと、一家が生きて行けるのは奇跡です。
アクシデントとはいえ、弟を殺した咎めを受けないのも理解出来ません。“人殺し”が説教師として敬われるようになるというのも随分です。
最後にNina Mae McKinneyといかさま師を殺し、今回は刑に服しますが、保護観察ということで故郷に戻ると老いた両親は健在で弟たちの背丈も前と変わりません。随分短い刑期だったようです。
というわけで、原作脚本を執筆した監督King Vidor(キング・ヴィドア)は、いささか御都合主義なところが多かったようです。「もう終わりか」と思うとなかなか終わらず、延々お話が続くという趣向は、濃厚な感じでもあり、多少辟易するところもありました。
映画の冒頭で、役者が画面から切れている(見えない)ショットがいくつかありました。あたかもカメラマンがファインダーを覗かないで撮影したような具合。これはひどい。
(May 02, 2003)