[Poison]

Gods and Generals

『ゴッド&ジェネラル/伝説の猛将』

【Part 2】

最初、「神と将軍」かと思い、南北両軍が一つの神(とその息子イエス・キリスト)に祈るという皮肉な運命を描いた映画かと期待しました。しかし、原題は"Gods"と複数でした。原作の批評を読むと、「将軍たちはギリシアの神々のように偉大に描かれている」そうなので、そういう意味かも知れません。いまさら南北戦争の英雄を偉大に描いても何も始まらないのですが。

戦闘シーンは迫力もあり、よく撮れていて素晴らしい。反面、人間ドラマの方はどうも嘘っぽくていけません。部下が死んでも泣かない"Stonewall" Jacksonが、仲良くなった少女の死の運命に泣きじゃくるとか、黒人の従者と共に神に祈る場面とか。もっとサラッと描いてくれればいいのに、これでも感動しないか、これでもかと長くてしつこいのです。

何度も出て来る『ジュリアス・シーザー』(シェイクスピア)の台詞、詩の朗読、ピアノ演奏など、「どうです?高尚な映画でしょうが」と自慢する感じも鼻に付きます。

びっくりしたのですが、政治家でも軍人でも偉くなると違うんですねえ。一兵卒はテントで寒さに震えているのに、将軍ともなると民家を没収して豪華なベッドでぬくぬくと寝ている。奥さんが赤ん坊を連れて慰問にも来る始末。

南北戦争では両軍合わせて計49.8万人が戦死したそうです。大砲で死んだ者も多いでしょうが、鉄砲で撃たれて死んだ兵士の方が多いでしょう。この映画を観ていて疑問に思ったのは、南北戦争の頃のアメリカ人がいかに馬鹿だったかということです。内戦そのものもそうですが、戦闘のやり方も馬鹿げています。敵の弾幕に対し、何の防備も無しでひたすら突き進んで行きます。何世紀も前のアフリカ人でさえ盾というもので敵の矢や槍を避けました。中世のヨーロッパ人でさえ金属の甲冑、盾を用いました。そういう例を知っているなら、この時代のアメリカ人も金属カヴァーを施した盾を用意すべきだったと思います。日本の機動隊のように盾に隠れて進軍すれば、こうまで無駄な死者を出さずに済んだでしょう。

本作は"Stonewall" Jacksonが主人公です。北軍のChamberlain中佐にも時間は割かれていますが、さしたる活躍はありません('Gettysburg'では彼が活躍しますが)。しかし、この"Stonewall" Jacksonも、自軍の銃弾で死んでしまうという人物なので、どうにもパッとしません。

リンカーン大統領は登場せず、単に彼のメッセージが読まれ、士官たちの会話に奴隷制の問題が出て来るだけです。実は、南北どちらにつこうか悩んでいた州に対し、リンカーンは「北軍に参加すれば奴隷を使用してよい」という特例を与えました。それによって北軍加盟を決めた州は二、三に留まらなかったそうです。結局、リンカーンの目的は「一つの合衆国」を維持する(脱退を許さない)ことだったわけで、国から綺麗さっぱり奴隷をゼロにすることが戦争の目的ではなかったことが分ります。その辺のことに全く触れず、旧態依然のリンカーン像も物足りません。

(March 01, 2003)





Copyright ©  2011   高野英二  (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.