[Poison]

4 Little Girls

(未)

【Part 2】

こういう映画を“批評”する必要はないのですが、私も25年間NHKでドキュメンタリー撮影をしていましたので、この映画を非常に注意深く見ました。このサイトでは映画は普通「観る」のですが、今回は「見る」です。つまり、椅子に凭れて鑑賞する「観る」ではありません。ほとんど「視る」に近い状態です。

当時の黒人社会をめぐる環境、情勢も過不足失く説明されていますので、予備知識がなくとも理解可能です。ただし、四人の少女達から離れる部分もあるので、焦点が定まっていないという怨みは残ります。

遺族と同じ黒人の監督がインタヴュアーを勤めているせいもあり、証言の内容は素晴らしい。曖昧な証言には監督がツッコミを入れます(当然ですが)。

問題はカメラです。素晴らしい話を収録しているのに、ファインダーを覗いていないような撮影をしています。この撮影担当は中年女性で、DVDの'Making of...'に出て来ます。「撮影中、泣けてしまって…」と告白していました。私も泣かずにはいられないような撮影もしたことがありますが、涙でファインダーが見えないということは起りませんでした。性格かも知れませんし、そこが男性と女性の違いかも知れないという気もします。このカメラウーマンの参加感と人柄には敬意を表しますが、しかし話す人の顔がセンターから外れる撮影には疑問を感じます。最近は常時揺れるカメラ、落ち着かないフォーカス、端っこに写される顔…などが流行だったり、それがナウだと云わんばかりの撮影が跋扈していますが、私に云わせればそういうのはアマチュア・ヴィデオの域でしかありません。レンズの前の対象に迫り、何かを観客に伝えるのがカメラマンの役割なので、焦点の定まらないカメラワークは観客の没入したい意識を妨害するものです。泣いても対象をセンターから離さないのがカメラマンです。

ダイナマイトの犠牲になった四人の検死写真が出て来ます。DVDの'Making of...'で、少女達の一人の父親が「我々にも辛い写真だ。しかし、いかに理不尽なことが行なわれたかを感じて貰うには必要だろう」と述べています。親としては正視出来ない筈ですが、あえて世のために目をつぶった決断です。これには驚かされました。

(August 11, 2002)





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