[Poison] The Gift
『ギフト』

【Part 2】

自動車修理工Giovanni Ribisi(ジョヴァンニ・リビシ)は父親を縛ってガソリンを振りまき焼き殺します。精神異常とはいえ、凄まじいものです。しかし、こういうサイド・ストーリィは全くメインの物語に関連しません。単に異常な要素を積み重ねているだけに見えます。考えて見れば、主人公が心霊術で死体を発見したり出来るので、通常のミステリや探偵ものに比べればコトが簡単に運んでしまいます。それで、周りを飾りたてて複雑に見せたかったのかも知れません。

ある人によれば、Cate Blanchettが用いているカードは心霊術のテストに使われるもので、その模様は単に透視する対象でしかなく、何かを読み取る手段にはならないそうです。タロット・カードのような意味を持っていないわけです。この映画の製作者達はそれを百も承知で、単にデザイン(特に水の模様)が映画に相応しいので使ったのでしょうが。

シェリフは最初彼女の占いに懐疑的でした。しかし、彼女が特定した場所から死体が出た上は信じないわけには行きません。裁判でもありのままを証言しますが、弁護側や傍聴人には彼の証言が非現実的で冗談のように受け止められるのは仕方がありません。シェリフの真面目な態度と証言内容の乖離が可笑しいシーンになっています。

Keanu Reevesは彼には珍しい粗暴な役。妻を虐待し、女子供を脅すというどうしようもない男を演じます。よくまあ、こんな役を引き受けたものです。彼は線の細いイメージなので、実際には全く似合っていません。南部は人種差別で有名ですが、実は男尊女卑の地域でもありました(と、過去形で書いていいのかどうか)。こういう古い世代の観念と無教養、無作法などが加わると"redneck"(レッドネック)と呼ばれる南部人の典型となります。

結局、Cate Blanchettは真犯人に殺されかけますが、それを救った人物はこの世の人ではなかった…というのは不思議です。急にStephen King(スティーヴン・キング)かオカルト・ファンタジーになっちゃいました。助けてくれた幽霊が極めつけの善人ならほのぼのとした余韻が残ったでしょうが、それがかなり異常な人間だったというのはスッキリしません。

Voodooなら南部に相応しいものですが、心霊術ならアメリカのどこでもいいわけです。残るは死体を沈めるスワンプと"redneck"の存在だけ。どうも“南部もの”としては、今いち何かが欠けています。

私はこれが“南部もの”に入りそうだと思ったから観たのですが、そうでなかったらこのテの映画は観なかったでしょう。こんな映画を企画し、大勢で大金と手間暇をかけて製作する正当な理由が見当たりません。まあ、そういう映画はごまんとあるのですが。

(November 08, 2001)





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