[Poison] George Wallace
『ジョージ・ウォレス/アラバマの反逆者』

【Part 2】

映画はClarence Williams III(クラレンス・ウィリアムズ三世)演ずる"handy man"(召使い兼何でも屋)のArchie(アーチィ)とGeorge Wallaceの触れ合いを軸に展開します。Clarence Williams IIIは'The General's Daughter'『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』で将軍の副官を演じていた黒人俳優です。彼が常に表情を押し殺したような演技をしているせいもありますが、この趣向は成功していません。この男がGeorge Wallaceに影響を与えるわけでもなく、物語を転がす役になっていないのです。

全編にわたって白黒で描かれる部分とカラーの部分が交錯するのですが、必ずしも過去が白黒というわけでもなく、演出意図が判然としません。

(彼の代理で)知事を勤めた妻が亡くなり、George Wallaceは前知事の姪でミス・アラバマにもなった女性を後妻に迎えます。撃たれるのはその後ですが、彼女は車椅子のGeorge Wallaceと抱き合い、ダンスをします。これは初めて見る試みなので、本当は感動のシーンになるところですが、撮影がただ一ヶ所からポンと傍観者的に撮っているだけなので、全然感動出来ません。この後、彼女はGeorge Wallaceを興奮させてセックスを迫って、彼を痙攣状態に追い込みます。結局、彼は不能となったことが分り、若い彼女は不倫に走ってGeorge Wallaceから離婚されます。映画には出ませんが、彼はこの後もう一度結婚し、また離婚したそうです。

身体障害者となり、前妻はこの世にいず、後妻は出て行き、彼は孤独感を噛みしめ過去を反省する心境になります。ある夜、Archieの助けでDextor Avenue Baptist Churchへ車椅子を進めます。ここはかつてキング牧師が公民権運動のスタートとした歴史的な黒人主体の教会です。夜間礼拝の会衆の中へ分け入り、牧師に「皆さんに一言云わせて頂くことをお許し願いたい」と頼みます。彼は静かに「アラバマの、そしてアメリカ全体の黒人が苦しんでいることは何かということを、私は学んだ。申し訳ない。私は間違っていた。お願いです。許して下さい」と話す。無言の会衆の中を彼が去りかけると、一人、また一人と彼に握手する者、肩を叩く者が現われ、いつしか全会衆が立ち上がって'Amazing Grace'の合唱となります。George Wallaceが反省し、謝罪したのは事実だそうですが、このように黒人の教会で謝ったというのは“映画的表現”でしょう。

劇場映画と違ってセットを少なくしたせいでしょうが、いくつかのシーンの現地録音(室内)がこもってしまって聞き取りにくいという結果になっていました。

二度の結婚における夫婦の話とArchie関係のストーリィが無駄です。どうせ観客はGeorge Wallaceの政治的見解の背景と、後年の悔悟の理由を知りたいわけですから、そこに専念してほしかった。人種差別はもともとGeorge Wallaceに強くあったものではなく、票集めの手段だったように描かれていますが、本当なのでしょうか?あまりにも好意的解釈のような感じもします。

(April 08, 2001)





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