[Poison]

Freedom Song
『フリーダム・ソング』


【Part 2】

高校生たち二人が未だに「白人専用」となっている食堂に“侵攻”する作戦が感動的です。彼等の目的は逮捕されることで、日曜に教会へ行く時に着用する背広上下にネクタイでキチンとして出掛けます。マネージャーが「俺の店を最初に選ぶことはないじゃないか。二番目にしてくれよ。頼むよ」と情けないことを云うのが可笑しい。結局警官が呼ばれます。予定通り逮捕された二人は、見守る仲間に「やったぜ!」とニコニコしながら警察へ向います。若さと強い意思が感じられる、いいシーンでした。

Danny Gloverはプロデューサーの一人も兼ねていて、子供可愛いさから利己的にしか考えられない父親を熱演しています。無理のない、抑制された熱演なので、観ている方も共感を覚えてしまいます。若者たちの果敢な行動も応援したいし、親としてのDanny Gloverの気持ちも分る。この辺は脚本のうまさです。

冒頭の回想シーンで、「白人専用」レストランに迷い込んだ幼い息子を掴まえた白人から、Danny Gloverがいびられるシーンがあります。この時の恐怖が、Danny Gloverにとってのトラウマとなっているわけです。物語の最後で、「白人専用」の表示が消されたレストランに、今度は父子で堂々と出掛けます。白人ウェイトレス達はまだ差別感を払拭出来ず、なかなか対応しません。しかし、無視も出来ないので注文を聞きます。息子が"Coffee. Strong and black."(コーヒー。濃いブラック)と云いますが、ここで"strong and black"は“黒人”にかけた二重の意味を持っています。それを察した父親が、かすかに笑みを浮かべて息子を見やる演出が良かった。息子を抑えようとしていたものの、ここまで運動を進めた息子を誇りに思う感情がよく出ています。

息子役のVicellous Reon Shannonはあまり頭の良くない番長タイプに見える外見が損をしていますが、運動を推進するアジテーター的存在をうまく演じています。

彼の母親はあまり登場しませんが、それまで息子の行動に批判的だった彼女が、運動がほぼ成功を納めた頃、息子の選挙名簿登録指導講座にやって来て、黙って受講するシーンも素晴らしい。母親が息子を誇りに思っている表情、息子の抑えた喜びの表情。台詞に頼らない、映画の強みを活かした脚本です。

Sweet Honey in the RockとJames Hornerによる音楽が素晴らしい。ゴスペル音楽とフリーダム・ソングが黒人達を勇気づける最大の要素であることが、よく分ります。

(February 18, 2001、2005年加筆)





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