[Poison] Fireproof
『ファイアー・ストーム』

【Part 2】

先ずは、この映画の名言集。最後にいちゃもんを少し付け加えます:-)。

黒人消防士Ken Bevel:(Kirk Cameronに)「女ってのはバラのようなものだ。ちゃんと面倒を見れば、彼女は花開く。しかし、ちゃんと扱わないと萎れてしまう」

新米消防士:「死ぬのが恐くないの?」
黒人消防士Ken Bevel:「ノー。おれの行く先は分ってるから(=天国の意)。だが、列車に撥ねられて行きたくはないね」

黒人消防士Ken Bevel:(Kirk Cameronに)「結婚指輪は永遠の誓いだ。いい時も悪い時も、富める時も貧しい時も。この食卓の上の塩と胡椒は味も色も違う。だが常に一緒だ。【彼は接着剤で塩と胡椒の瓶をくっつけてしまう】これが結婚さ。離れちゃいけないんだ」

黒人消防士Ken Bevel:(Kirk Cameronに)「あんたは知りもしない人を救うために燃え盛る家の中に飛び込んで行く。それなのに、自分の結婚を燃え尽きるままにするのか?」

18日目の'The Love Dare':「妻を研究せよ。彼女の好き嫌い、ホビーなど何でも。結婚するまでの研究は高卒程度の内容に過ぎない。結婚後も大卒、大学院卒、博士号が得られるまで妻の研究を続けるべきである」

23日目の'The Love Dare':「精神への寄生虫に気をつけよ。それは普通ギャンブルや麻薬やポルノ愛好などの形を取る。それらはどれも快楽を約束するものだが、病気のようにはびこっていく。そして人間の想念、時間、お金を消費する。寄生虫は愛する者への忠誠心と心を盗み、結婚を破綻させる。妻を愛するなら、心にある(寄生虫による)中毒を壊滅させるべきだ。さもないと、自分自身が壊滅的打撃を受ける」

【註】この映画は子供たちも観ることを前提に作られているため、「ポルノ愛好」と柔らかい表現になっていますが、これを「浮気」と置き換えればそのままプロ・ゴルファーTiger Woods(タイガー・ウッズ)の状態に当てはまります。彼には'The Love Dare'『愛の挑戦』が必要だったでしょう。

妻が熱を出した時、Kirk Cameronが介抱します。妻が「どうしてこんな(頼んでもいない余計な)ことするの?」と聞くと、彼は「パートナーから離れちゃいけないんだ。特に火事の際には」と答えます。これは彼が映画の冒頭で「パートナーから離れるな」と新米消防士を諌めたことと、現在の結婚生活(耐火建築)に火が近寄って来ていること、その両方に呼応しています。この後、Kirk Cameronが膝をついて真剣に妻に詫びます。妻も涙を流しながら聞き入ります。二人の紅潮した顔、目の涙、表情などは最高です。

愛を確認し合った二人は、牧師(監督Alex Kendrick演)と大勢の親戚・友人の前で、新たな誓いの儀式を行ないます。「結婚は契約ではなく、終生の誓いである」というテーマを明確にしているわけです。ウェディング・ケーキの頂上には山高帽の胡椒の瓶と白いドレスをまとった塩の瓶が寄り添って立っています。凝っています。

脚本家二人が男性であるせいか、妻の描き方が通り一遍のような気がします。特に、夫が必死に'The Love Dare'を実行しているのに、妻は不思議にも思わず一切を無視します。あまりにも頑(かたくな)なので、観ていてこの妻への同情心が薄れてしまいます。頑な女性も確かに存在しますが、あまりにも無神経のように思えてしまうのが欠点。

なくもがなのどんでん返しがあります。Kirk Cameronの父が手書きの'The Love Dare'を送って来たので、Kirk Cameronも観客もその父が'The Love Dare'を40日間実行したのだと思い込みます。違うんだそうです。父が離婚を望み、母が父を引き止めるため'The Love Dare'を実行したのだそうです。これは母を疎んじるKirk Cameronが誤解を恥じ、母親に詫びるシーンを作るためだけの一捻りに過ぎません。親子の問題にまで手を広げる必要はなかったと思います。

Kirk Cameronが「ポルノ愛好」を恥じるシーン。画面ではよく分らないかも知れませんが、色っぽい女性が"Do you want to see?"(見たい?)と呼びかける小さなウィンドウが表示されています。これはもともとは"Do you want to see all of me?"(私の全てが見たい?)だったのですが、青少年によくないというので台詞が変えられたそうです。反省したKirk Cameronはコンピュータを破壊します。これは勇み足でしょう。E-mailだけでも役に立つし、ワープロにも使えるわけですから、コンピュータを壊すなんて非常に原始的です。

妻Erin Betheaは母のためのベッドと車椅子は、てっきり彼女に好意を寄せてくれている医師のプレゼントだと思い込みます。ところが実際には、夫Kirk Cameronが(ボートのために貯めていた預金から)$24,000を払い、医師は残りの$300払っただけだったことが分ります。こんなことってあるでしょうか?Kirk Cameronはどうせなら$300借金してでも全額払うんじゃないでしょうか?医師はどうやって$300の不足を知ったのか?なぜノコノコ残金$300だけ払いに行ったのか?謎です。理解出来ません。

脚本家二人のコメンタリーを聞いていて、凄い事実を知りました。主演男優Kirk Cameronはキリスト教原理主義者で、自分の妻以外の女性とのキスを拒否したのだそうです。たまたま、彼の妻とErin Betheaは体型が似通っていたため、彼の妻を撮影現場に呼び寄せて女優と同じ衣装を着せ、シルエットのキス・シーンとして撮影したのだそうです。こんなことってあるんですねえ。驚きました。

(January 13, 2010)





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