【Part 2】
悪い奴等の間でも葛藤がありますが、待ち受ける刑事と地元警官との間にも軋轢があります。Bill Paxtonが「俺もロスの刑事になりたい」と云ったことをロスから来た刑事達が「カッペのくせに…」と蔭で嘲笑します。それをたまたまBill Paxtonが聞いてしまう。これがラストの撃ち合いにBill Paxtonが(刑事達の応援を頼まず)一人で行く下地を作ります。この、追うもの、追われるもの双方でドラマが展開するという試みは巧いと思います。
また、Billy Bob ThorntonがCynda Williamsの隠れ家に車を走らせる場面では、他の登場人物、すなわちBill PaxtonとCynda Williams、Bill Paxtonの妻、刑事達などの画面が何度かフラッシュ・バックを繰り返します。'The Westside Story'『ウエストサイド物語』における"Tonight (Quintet)"の合唱のシーンに似ていますが、「いよいよ大詰め」と盛り上げるいい手法です。このフラッシュ・バックにかぶさる急テンポのハーモニカの演奏が効果的。マカロニ・ウエスタン風ではありますが。
この映画で一番恐ろしいのは男どもではありません。Cynda Williamsです。彼女はロスで顔見知りの家に親し気に入り悪漢二人を手引きしました。最後の隠れ家でもBill Paxtonが待ち受けている家にBilly Bob Thorntonを誘き寄せます。苦渋も何もなく、平然と行います。彼女にとっては Billy Bob Thorntonがどうなろうと知ったこっちゃないという感じです。女性は恐い。
題名の'One False Move'(過ちの一歩)とは何だったのか?Bill Paxtonが単独で事件を解決しようとしたこと?Cynda Williamsの言葉に誘われ家に入ったBilly Bob Thorntonの行動か?車で待っていればいいものを、他の二人を信用しないで一緒に家に入ったMichael Beachの判断か?Bill Paxtonが二人を銃で這いつくばらせようとしているのに、叫び声を上げて二人の反撃を許したCynda Williamsの愚行か?こういう風に女の叫び声一発で撃ち合いを始めさせ、全員がくたばってしまうというは残念至極なB級的段取りです。
Bill Paxtonの生命については何の説明もないのですが、彼は死んだんでしょうねえ。フラッシュ・バックで奥さんを出したというのが、不吉な運命を予告したようですし。しかし、生きてるのか死んだのかはっきりさせてほしいものです。
ヒューストンの売人を殺した後、非常に妙な編集があります。私は市販ヴィデオで視聴したのですが、オリジナルのフィルムがワン・カット抜けたような感じでした。
それと、最後のCynda Williamsの隠れ家の室内シーンはスタジオのセットでなく、ロケ地にある家をそのまま使ったようです。彼女とBill Paxtonの会話は籠(こも)ってしまってよく聞き取れませんでした。
(June 25, 2002)