[Poison] Miss Evers' Boys
『ミス・エバーズ・ボーイズ〜黒人看護婦の苦悩』

【Part 2】

ダンサーのWillyが段々踊れなくなって行くエピソードは悲しい。最初は「なぜ、ダンスの好きな男がこうも比重が大きく描かれるのか?」と疑問でしたが、ちゃんと理由があったわけです。画面に変化を付けエンタテインメントを加えるだけではなく、病状による身体的変化を見せたかったわけで、これは脚本(戯曲)の上手さです。白人医師Craig Shefferが最新の都会のダンスをWillyに教えるというのも、彼自身に多少の人間味を加え、Willyを奮起させるという両面に役立っています。

Laurence Fishburneが製作者の一人ということが影響しているのかどうか分りませんが、Alfre Woodardとのロマンス部分が長過ぎます、この映画のテーマは治療無しで放置された人々の悲劇の筈なので、そちらに比重を置くべきだったでしょう。

14年後の1946年には400人のうち100人が亡くなっていて、他の患者も深刻な状態に陥っていたそうです。この頃、一般社会ではペニシリンがとっくに普及していた時期なのに敢えて投与しなかったというのは酷い話です。ナチが収容所のユダヤ人を対象に人体実験をしたのはよく知られた事実ですが、アメリカでも黒人を相手に非人道的な“研究”が行なわれていたわけです。

1974年に合衆国はこの「タスキギー研究」の生存者に一人$37,500、患者の遺族に$15,000を支払いました。1997年に至って、クリントン大統領は「当時我が国がやったことは恥ずべきことで、私としても申し訳なく思う」と生存者に謝罪しました。1997年と云えば研究終了後20数年経ち、このTV映画が公開された年です。

しかし、当初6ヶ月〜1年という予定だったのに、40年も続けたという医師たちの判断も異常ですね。ズルズルと…という結果だったのでしょうが、こんなまやかしに人生の半分を費やして、何の疑問も湧かなかったのでしょうか?白人医師Craig Shefferには「研究を完遂して歴史を作る」という野望があったようですが、黒人医師Joe Mortonはそれに否定的だったわけで、彼とAlfre Woodardは真実を患者たちに告げて別の職場を探せたと思うのですが。

(April 16, 2001)





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