[Poison]

The Three Faces of Eve

『イブの三つの顔』

【Part 2】

この映画の原作を書いた精神科医に対しては、必ずしも褒め言葉ばかりが与えられていません。原作を読んだ人々は彼のEveへの扱い方(催眠術の行き過ぎ?)に疑問を呈し、さらにEveを踏み台にして本によって有名になろうとしたと非難する人もいます。しかし、多重人格をポピュラーにし、「稀ではあるが、あり得ることで、決してクレージーではない」と一般化した功績は認めるべきでしょう。

この映画のストーリーでは、Eveの少女期の思い出したくない恐怖のトラウマが多重人格の発生源であり、そのトラウマを思い出すことによって二つの人格が消え去るようになっています。消え去ったのは人妻Eve WhiteとプレイガールEve Blackで、聡明なJaneが生き残ります。Janeは小学校の各学年の担当教師の名前を挙げ、全ての記憶が戻ったことを証明します。

当時としてはトラウマと自閉症、鬱病、精神病などの関連はあまりポピュラーでもなかったでしょうから、上のような段取りでハッピーエンドになってもいいのでしょうが、現在の視点で云うとあまりにもあっけなく、「え、それで一件落着なのお?」と思ってしまいます。

'I'm Eve'『私がイヴ』を著した患者自身は、一冊では足りずにもう一冊続編を執筆したそうです。何も起らない幸せな生活が本になる筈はないので、多重人格がぶり返したのではないかと推察しますが、どうでしょうか?

いずれにしても、これはJoanne Woodwardの演技を鑑賞するための映画なので、あまり細かいことを考えない方がいいようです。

(May 08, 2003)





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