[Poison]

Intruder in the Dust

(未)

【Part 2】

老婦人を見張りに、まだ少年っぽい男の子二人が墓を掘り返すシーンがスリリング。私だったら気持ち悪くて嫌ですね。この二人は丁寧に埋めて帰って来ます。

シェリフが囚人を使って、もう一度墓を掘り返します。この一連の大騒ぎはヒッチコックの'The Trouble With Harry'『ハリーの災難』(1955)に似ていて滑稽。

続々と近郷から人が集まり、暴徒によるリンチが勃発する雰囲気濃厚となりますが、何と看守役の市民は「家畜に餌をやらなきゃ」と帰宅してしまいます。仕方なく老婦人Elizabeth Pattersonが警備の役を勤めます。Gowrieの長男Crawford(クロウフォード)がガソリンを床にぶちまけ、彼女もろとも黒人を焼き殺す決意を見せますが、Elizabeth Pattersonは動じません。しかし、この男はガソリンスタンドから道路を横切って留置所までガソリンをこぼして歩いたわけですから、火を点ければ'The Bird'『鳥』のようにスタンドも炎上し、類焼で町全体が燃え上がる恐れがあります。無茶苦茶です。

後半で重要な役目をする被害者Vinson Gowrieの父親ですが、息子思いの真っ直ぐな性格がうまく使われています。空っぽの棺を見て息子の遺体が無いことを嘆き、「もしかして流砂の中に捨てられたかも?」という示唆で、流砂の真っ只中へ飛び込むのが凄い。

結局、真犯人はGowrie家の父親が経営する製材所の木材を盗んでいて、それを見つかったために口を封じる目的でVinson Gowrieを撃ったことが分ります。木材を盗むのは軽い刑で済む筈で、人を殺すほどのことではないでしょう。これも無茶苦茶です。

弁護士役のDavid Brianは、この映画ではああだこうだ講釈を垂れるだけで、何もしません。最後に活躍するかと思ったら、シェリフの活躍に任せてしまいます。こんな怠惰な役がタイトルのトップというのも珍しい。

何故黒人Juano Hernandezが真実を語らなかったかというと、その真実はあまりにも想像を絶することで、とても信じて貰えないということだったわけです。それを喋ったら即リンチだったでしょう。証拠だけがモノを云うと知っていたJuano Hernandezは、あくまでも冷静な男です。

ほぼ無名に近いキャスト、こじんまりしたプロットで、最初から小品の枠で作られた映画です。「William Faulkner原作」というのが売りなのでしょうが、人物群の行動があまりにも常識を超えているため、小さな町の一夜の悪夢という感じになっています。

(July 10, 2001)





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