[Poison]

Drumline

『ドラムライン』

【Part 2】

日本でもアメリカのフットボールのTV中継を何度か観ましたが、いつもハーフタイムはCMタイムや解説タイムになってしまい、マーチングバンドやチア・リーダーの活躍を観ることは出来ませんでした。アメリカでも、実はTVでハーフタイム・ショーは解説タイムです。やはり、競技場へ出向かないといけません。私がこちらで生で観たマーチングバンドと云えば、地元Meridianの高校のバンドと、仕事で撮影したカリフォーニア大学バークリー校のバンドだけです。

数百人全員が演奏しながら一糸乱れず振り付け通り動くというのがマーチングバンドの真骨頂であり、からくり人形的パフォーマンスが特徴です。この映画で分ったことですが、彼らは客席からではよく見えないような細かい所作(スティックを廻す、隣の人間の太鼓を叩く等)もやっているようです。いずれにしても「揃っている」ことが大事であり、個性を出したりソロ・プレイを演ずることは出来ません。音色、リズムも和太鼓などのような情緒纏綿というものではなく、どちらかといえば機械的な技術を披露するもののようです。

この映画は一匹狼に近い性格の主役を据えたのですが、これは無理がありました。そういう風に一人が脚光を浴びるような要素は本来マーチングバンドには無いのです。

そこで、対戦チームとの小太鼓パート同士のバトルというシーンが考え出されたようです。これはとても面白い趣向ですが、しかしここでもソロが許されるわけではないので、主役Nick Cannonも"one of them"でしかありません。ここが苦しいところです。

最後のバンドのトーナメントに期待しましたが、Nick Cannonの大学のパフォーマンスが圧倒的にいいとは思えませんでした。これで優勝しちゃうというのは、ちとご都合主義です。

しかし、フットボールのチームは全米どこの中学、高校、大学にもあり、バンドもそれに付随してあるわけです。そうした蔭のヒーロー達にスポットを当てた企画は賞賛に値しますし、観客動員にもまずまず成功したようです。惜しむらくは、平凡な脚本、共感出来ない主役の性格と役者選びです。これなら、本物のバンドのドキュメンタリーの方が良かったかも知れません。

(January 12, 2003)





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