[Poison]

Red Dragon

『レッド・ドラゴン』

【Part 2】

Anthony Hopkinsはよくまあこのシリーズにつきあいますねえ。彼あってのシリーズですから、莫大な出演料を貰っているのでしょう。しかし、サーの称号を得た俳優なのですから、'The Remains of the Day'『日の残り』(1993)のような映画にもっと出て貰いたいものです。Thomas Harris(トーマス・ハリス、原作者)はもう続きを書かなくていいからね。引っ込んでいなさい。

Anthony Hopkinsはいつも通り…というか、いつもほど恐くありません。Ralph Fiennesは'Schindler's List'『シントラーズ・リスト』(1993)のナチの将校の方がずっと恐い。大体、この人に人間に食いつく役をやらせても似合いませんよね。Edward Nortonは誰が演じてもいい役を、さらっと演じているだけ。彼は若過ぎて、引退する役には相応しくありません。。

要するに傍役のAnthony HopkinsとEmily Watsonだけが、彼等でなくては出来ない芝居をしているだけなのです。脚本がRalph FiennesとEdward Nortonを描き込んでいないとも云えますが、それはEmily Watsonも同じ。彼女は演技で立派に役を光らせました。

'USA Today'に映画の裏話が出ていました。それによると、この映画の男優三人(Hokins、Norton、Fiennes)はみなこの役を受けるかどうか逡巡したそうです。分りますね、その気持ちは。単なる金儲けに過ぎず、芸術性皆無のお話ですから。それでもRalph Fiennesが演じた殺人鬼の役は、実は多くの有名俳優がやりたがったそうで、その一人はSean Penn(ショーン・ペン)だったとか。また、監督Brett Ratner(ブレット・ラトナー)が33歳と若いせいもあったでしょうが、撮影現場での俳優達とのぶつかりあいが多かったようです。Brett Ratnerは珍しく潤沢な予算を得たため、Anthony Hopkinsの演技でさえ一回でOKにせず、何テイクも撮ったとか。彼の理屈は「またAnthony Hopkinsと組めるかどうか分らないので、私自身が彼の演技を楽しみたかった。また。観客には彼等がまだ見ていない新鮮なハンニバル・レクターを見せたかった」というもの。しかし、Harvey Keitelとは三時間も議論する羽目になり、Edward Nortonを説得し切れない場面もあったそうです。云われてみれば、役者たちの間に流れるべき気脈というものが感じられませんね。皆さん早くこんな仕事を切り上げたいのに、若造が別テイクを要求して時間を引き延ばせば、和気あいあいとはならんでしょうねえ。

小説と違って映画は何でもかんでも見せないといけないのが辛いところ。見せてくれないものは納得出来ません。そういう意味で、製作者たちが大火災の前にRalph Fiennesが自殺したと我々を信じさせたがっても、彼の死に顔が出て来ない限り信じられるものではありません。死に顔を見せてくれない人物は、必ず復活するというのが映画ファンの常識です。その映画で復活しない場合は、続編で復活します:-)。我々が何本こういう映画を観てると思ってるのでしょう?馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。

最後にEdward Nortonが息子を助ける機転で、息子を口汚く罵ります。それがマザー・コンプレックスのRalph Fiennesを怒らせて、結果的に息子を救うのですが、Ralph Fiennesがマザー・コンプレックスだと、いつ知ったのでしょう?これは分りませんでした。

この映画でいいのは、Edward Nortonの奥さんが拳銃を習うところと、それを見事に活かす場面。Ralph Fiennesの家の大爆発も上出来。

Anthony Hopkinsが捜査協力の御褒美に一流レストランのコックによる料理に舌鼓を打つところはユーモラスでいい場面でした。それを監獄の所長が苦々しい思いでモニターを見ているのもおかしい。最後に監獄の所長が「FBIの若い女の子があんたの協力を求めているが、どうせ断るだろ」と云うのに、Anthony Hopkinsが一瞬間を置いてから「何て名前?」と聞くのが愉快。観客にウィンクしているわけで、このセンスは買います。

ところで、Ralph Fiennesの背中の入れ墨は「ドラゴン」というより羊みたいに見えます。特に、その角。で、Ralph Fiennesはボストン美術館で絵を食べてしまいます。紙を食うんですから、これはくろやぎさんみたいです:-)。

(October 15, 2002)





Copyright (C) 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.