[Poison] Black Dog
『ブラック・ドッグ』

【Part 2】

問題は主演のPatrick Swayzeにあまり魅力がないことです。私が初めて彼をスクリーンで見たのは 'Point Break'『ハートブルー』 (1991)のロサジェルスのプレミア・ショーでした。James Cameron(ジェイムズ・キャメロン)が製作総指揮ということもあって、赤絨毯を踏んでスターや有名人カップルが多数押し掛けました。そういう人々を撮影した後、取材班(と云っても三名だけですが)も初公開の映画を見せて貰いました。どちらかというとひ弱な感じのKeanu Reeves(キアヌ・リーヴス)よりも、Patrick Swayzeの粗暴・剛胆で太っ腹な演技が印象的でした。この作品はそれから七年後ですが、こんなに老け込んでしまうもんですかね(撮影当時46歳)。寡黙で剛胆という役は似たようなものなのに、こちらの彼には目に光がありません。生気が感じられないのです。コンピュータの3Dモデリング・ソフトで描かれた人物みたいにノッペリと無表情です。

【追記:本日スーパーのレジに並んでいたら、あるイエロー・ジャーナリズム週刊誌の表紙に『ガンと闘うPatrick Swayze』という見出しがありました。それが本当なら、実はこの映画の頃から始まっていたのかも知れません(March 17, 2008)】

しかし、一番の問題はプロットです。アトランタでコンテナ・トラックを用意したのはMeat Loafですから、彼が積み荷を奪いたいのなら最初から違法銃器を盗み取っておけば済んだのです(Patrick Swayzeは積み荷の確認もしなかったし)。しかし、それでは注文主(Graham Beckel)に簡単にバレてしまうので、どうしても第三者が強奪したことにしたいということなら、Patrick Swayzeのトラックのガソリンタンクに角砂糖を入れるとか何か細工をすればよかったのです。手持ちの中で最も高性能のトラックを最高の状態に整備して提供し、それを劣った車で追いかけるなんて愚の骨頂です。

Patrick Swayzeが運転中、何かガシャ!と音がします。「何だ、今のは?」と相棒。Patrick Swayzeは顔色も変えず"A Mazda."(マツダを踏んづけたんだ)と云います。この映画には丸紅と東宝・東和が出資してるので、日本車へのサーヴィスの台詞なんでしょうか?馬鹿にしているようにしか感じられませんが。丸紅と東宝・東和は何も抗議しなかったんでしょうか?

Part 1で説明した“ブラック・ドッグ”も、単にPatrick Swayzeが故殺の罪で服役したことの説明でしかなく、現在の物語には何ら関わって来ません。思わせぶりなタイトルというだけに終っています。

(February 06, 2008)





Copyright © 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.