[Poison] 'Red Dirt'
(未)

【Part 2】

'Brokeback Mountain'『ブロークバック・マウンテン』(2005)風とは云っても、ただ一度キスするだけ(それもドライ)ですから、これを“ゲイ”の映画と云い切るのはどうかと思われます。監督はこれをミシガン・レスビアン&ゲイ・フィルム・フェスティヴァルに出品したそうですから、当人は“ゲイ”の映画だと認めているようですが…。なお、このフェスティヴァルでは「ゲイ映画としては不十分」と評されたそうです。

問題は、ドライなキスであっても、そこへ行く過程がきちんと描かれていて説得力があるか?という点です。'Brokeback Mountain'は山で生活する主役二人が下界と遮断され、孤独感を癒すには二人の体温しかなかったという過程が綿密に描かれていました。この'Red Dirt'製作中の1998年の時点では、そこまで描くとあまりにも過激なので控えたということかも知れません。事情はどうであれ、'Red Dirt'の青年二人のお互いへの“恋情”は唐突過ぎて納得出来ないのが困った点です。

"Forever and a day and the blood of man, stained red the dirt of the Mississippi Land, and in this journey we go, but in this place we'll stay. If only in the heart where memory of love eternally, Remains."

上の文句は映画の初めと墓碑としてと二回登場し、ラストの青年二人の別れの言葉ともなります。先ずWalton Gogginsが"Mississippi Land"までの前半を唱え、Dan Montgomeryが後半を続けます。何か小説からの引用かと思って、元高校の英語教師をはじめ何人かの人に聞いてみましたが、誰も分りませんでした。

結局Karen Blackは甥として育てていたDan Montgomeryの伯母さんなどではなく、実の母であることを告白します。何故ずっと黙っていたのか、私のリスニング能力では分りませんでした。このDVDは手抜きで英語字幕が備わっていないのです。

私にとって残念だったのは、これが当市Meridianという土地に関する映画ではなかったこと。見慣れた町の風景は一切出ず、南部のどこでもいい感じに描かれています。

DVDに含まれているこの映画の予告編を見て驚きました。ミシシッピ州の映画の筈なのに(上の英文にもちゃんとMississippi Landと出ています)、何と「ルイジアナ州南部の湿地帯が舞台」だとアナウンスされるのです。ミシシッピ州出身の監督がいながら、一体どうしたことでしょう。プロデューサーが「ゲイならルイジアナ州がふさわしい」と考えたのかも知れません。確かにルイジアナ州ニューオーリンズは風紀がいかがわしいところですから、ゲイも沢山いるでしょうが、実は当市でも目に余るような状況になっているのです。町の中心部近くの昔の水源地を公園にして、周囲をジョギングしたり散歩したり出来るようになっています。日没後、ゲイの連中が車でそこへやって来ていちゃいちゃするそうで、パトカーが排除するようになったというニュースを読みました。私の知人にも「息子がゲイで…」という人が何人かいます。

なお、映画の中で「ニューオーリンズの動物園で白い鰐を見た」という台詞が二回出ます。白い鰐がいるのは本当だそうです。突然変異ですね。ただし、全然繁殖しないので、現在の数頭が死んだらおしまいとのことです。

私が住んでいる町で生まれた監督が私が住んでいる町で撮影した映画を観るという機会はそうザラにある経験ではないと思いますが、誉める言葉が見つからないのが残念でした。

(December 01, 2006)





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