[Poison] The General's Daughter
『将軍の娘/エリザベス・キャンベル』

【Part 2】

「将軍の娘」の異様な死にざまは、七年前、彼女がWest Point(ウェストポイント)士官学校で訓練を受けていた時、夜間大演習のさなかに数名の兵士たちから一晩中強姦された時の再現であることが判明します。いくら夜間で目立たないとは云え、演習をほっぽらかして一晩中道草を食ってるなどということが可能でしょうか?上官たちは兵士を査定するために気を配っている筈で、全然作戦行動を取らない兵士なんてすぐ分っちゃうと思うのですが。

娘は、権力を持っている父親がすぐ憎き犯人達を罰してくれると期待していました。しかし、軍上層部は、軍内部の犯罪を公にするとWest Pointの名誉ある歴史を損ない、世間の非難を浴びることも必至であるとして、将軍とその娘に「事件は無かったことにする」ことを要請しました。娘の願いを無視し、組織の論理を優先する父親に幻滅し、そこから「将軍の娘」の心理的転落が始まったわけです。

John TravoltaはTV画面の将軍が敬礼すると、TVに向って敬礼します。ヴィエトナム戦争時代に将軍の下で闘っていたそうで、軍人の階級意識が抜けないことを示しているのでしょう。そういう意味では、映画の終り頃に将軍への態度を変えるところが面白い。

John Travoltaは「あんたの娘は七年前に死んだのだ。殺したのはあんただ」と将軍を責めます。これは正しい。しかし、一介の軍犯罪捜査官が副大統領候補になるような将軍を軍法会議にかけられるものでしょうか?大統領を新聞記者が退任に追い込んだ例はありますが、あれは軍内部ではありません。'A Few Good Men'『ア・フュー・グッドメン』では大佐を引きずり出して有罪に追い込みますが、あれはチームで攻めていました。John Travoltaは一人で将軍に会って「あんたを軍法会議にかける」などと云っちゃうのですが、そこでズドンと一発見舞われたらお仕舞いだったでしょうに。

Madeleine Stoweにも見せ場が用意されています。昔「将軍の娘」を強姦したと思われる兵士に証拠物件(精液のついたパンティ)を見せ、「最近の科学の進歩は凄いわね。DNA鑑定よ。分るでしょ?」とか云って、兵士から告白を引き出します。「ありがと。じゃあね」と去り際に「証拠物件」をゴミ箱に捨てるので、兵士が目を白黒させると、「あ、これ30分前に買ったものなの。バイ!」と背を向けます。なかなかやります。

しかし、Madeleine Stoweはどうにもふやけた感じで、捜査官らしい鋭さがありません。'The Last of the Mohicans'『ラスト・オブ・モヒカン』の時は良かったのですが。余談ですが、『ラスト・オブ・モヒカン』は、出て来る誰もが良かった。インディアン達でさえも素晴らしかった。撮影も満点。ああいう映画が観たいですねえ。

蛇足ですが、'Kiss the Girls'『コレクター』、'Mission:Impossible'『ミッション:インポッシブル』、'Bone Collector'『ボーン・コレクター』、'Charlie's Angels'『チャーリーズ・エンジェル』に共通する、こういう結末はもううんざりです(解る人には解る)。

(April 02, 2001)





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