[Poison] Crimes of the Heart
『ロンリー・ハート』

【Part 2】

今頃やっと気づいたのですが、戯曲を映画化した作品を観るのは疲れますね。ブロードウェイで人気があったから映画化するわけで、当然戯曲に忠実たらんとして作られます。純粋な映画では台詞が無いシーン(アクション・シーンとかベッド・シーンとか)もあり得るのですが、無言劇でもない限り台詞無しの舞台というのはあり得ません。そうすると、戯曲の台詞、それも凝縮された言葉の洪水が映画にも引っ越して来るわけです。それを聞き取るために気が抜けません。それで疲れる。'A Street Car Named Desire'『欲望という名の電車』も'The Miracle Worker'『奇跡の人』 もそうでした。いい映画だと分っているのですが、気軽に「もう一度見ようかな」という気にはなりません。疲れるのが恐いのです:-)。その点、この'Crimes of the Heart'『ロンリー・ハート』は喜劇仕立てなので、再視聴を躊躇することにはならないでしょう。

三姉妹の母親の自殺は米国中に報道されたことが、いくつかの新聞記事の切り抜きで紹介されます。母親が有名人だったわけではなく、その自殺法がユニークだったのです。愛猫を道連れにした“心中”だったからです。遺体にシーツを被せた写真も出て来まして、母親の遺体の脇に小さなシーツに包まれたものがあり、尻尾がのぞいているのです。

弁護士から黒人少年と****している写真を見せられたSissy Spacekは、Diane Keatonに見られたくないので高い棚の上に写真を隠します。弁護士がSissy Spacekの身体を抱えているのを不審に思ったDiane Keatonを誤魔化すため、Sissy Spacekは「私たちダンスしてるの」と云って二人で踊り始めます。弁護士も真面目に踊るのが可笑しい。Diane Keatonが電話に出ても、まだ必死で踊る二人の姿も可笑しい。

病院の夫から、「告訴はしないが精神病院にぶち込んでやる」と警告されたSissy Spacekは、絶望して母親と同じように首を吊ろうとします。しかし、愚かにも天井灯の金具にロープを引っ掛けたものだから、天井灯ごとドシーンと落下してしまいます。Sissy Spacekは階段を下りて一階へとやって来ますが、彼女の首のロープに繋がった天井灯が後ろからごとんごとんとくっついて来ます。台所で包丁で胸を刺そうとしますが、恐くて刺せません。最終的にガス・オーヴンに首を突っ込んでマッチで火を点けようとします。

オーヴンに首を突っ込んでいる妹を発見したJessica Langeは、Sissy Spacekを助け出し、首からロープを外し、繋がっている天井灯を片付けながら「あなたは正常よ。精神病院なんかへやるもんですか!」と励まします。正常でしょうかねえ。

この映画では物語の舞台となっている町の名前を駅名で出し、映画の中の新聞紙面にも地名が出て来ます。どちらもミシシッピ州生まれの原作者が慣れ親しんだ地域のようです(州都Jacksonの少し南方)。それなのに、撮影は全てノース・キャロライナ州で行なわれています。映画で湖らしきものが出て来ますが、どうみてもミシシッピの湖には見えません。残念です。

(January 24, 2007)





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