[Poison] Contraband

【Part 2】

ってほど書くことがそうあるわけではないんですが:-)。

この映画もルイジアナ州の映画関係への減税措置の恩恵を最大限利用しているようです。ルイジアナ州は、ハリケーン・カトリナ以降、州内でスタッフ、キャストを雇う撮影クルーには大幅減税を約束しています。雇用促進と、映画によるイメージ・アップで観光客も呼べるだろうという作戦です。

パナマ運河やパナマ市の遠景は実写ですが、パナマの悪党どもの美術品輸送車襲撃シーンは、実際にはニューオーリンズで撮られたそうです。美術品輸送車襲撃シーンは、有名なスーパードーム近くの高速道路下で撮られており、背景のビル群はニューオーリンズの町並みなのです。"PANAMA"などと大書した看板を立てて誤摩化しているわけです。

この物語は、ヤクザな商売から足を洗った主人公が、義弟の命を救うために再度密輸入を試みるという筋立てです。日本のヤクザ映画にも、一旦足を洗って堅気になったのに、義理と人情でまたもやヤクザ渡世に戻り、切った張ったをしなければならない主人公が多く存在しました。これは「善人だかんね。でも、しがらみで悪いことしなきゃなんないんだから…」という口実でした。観客の同情を誘い、主人公が法律違反をしても仕方がないと思わせる手口です。そういう場合、勧善懲悪の倫理により、主人公が死んだり傷ついたり、刑務所行きになったりするような結末もありました。

この映画はどうか?当初目指した偽札密輸入だけでなく、麻薬の密輸入にも成功し、さらに濡れ手て泡の二億円(闇価格)の美術品まで手に入れて万々歳で終わります。Mark Wahlbergとその一味は、もう一生働かなくてもいい稼ぎをしたことになります。

頭のいい現金・金塊強奪の映画は数々ありますが、大体において主人公たちには何らかのしっぺ返しによる落ちがあるのが普通でした。古くはアレック・ギネス主演の'The Ladykillers'『マダムと泥棒』(1955)、フランク・シナトラ主演の'Ocean's Eleven'『オーシャンと十一人の仲間』(1960)など。これらはユーモラスで後味がよかった。しかし、この映画のように巧妙に(そして幸運に)犯罪に成功する物語って、何か落ち着かない気がします。いくら一度足を洗って、義弟を助けるためとはいえ、犯罪に手を染めるわけですからね。それが大成功どころか大富豪への足がかりになってしまうというのはどうなんでしょう?

重要な役の筈のBen Fosterが密輸入作戦に参加せず、ニューオーリンズに残る設定で、「あ、こりゃ何かあるな?」と思わせるのも脚本・配役のミスです。

IMDbの掲示板には、「麻薬はよくないが偽札はいいという態度は許せん!」とか、「悪党どもはガムテープで覆面してるけど、剥がす時に痛いんじゃないの?」という意見が載っていました。私も同感です。

実際のパナマ運河では現地の運河関係者が引き継いで操舵し、船の船長は航行に関して何も指示出来ないそうです。この映画で船長がああだこうだ指示しているのは事実と違うわけです。

(July 30, 2012)





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