[Poison]

Cat on a Hot Tin Roof

『熱いトタン屋根の猫』

【Part 2】

映画は、Elizabeth Taylorが義姉の憎たらしい子供と一戦交えるシーンで始まる。どうやら家族の間の不仲を象徴したものらしいが、唐突過ぎるし、いきなり枝葉末節の出来事を見せられた気になってしまう。

Paul NewmanとElizabeth Taylorの間に何が起ったのか分らぬまま、ずっと二人のいがみ合いを見せられる。既に死んでしまったPaul Newmanの親友とElizabeth Taylorが浮気をしたように解釈出来るやりとりで、その通りならPaul Newmanが怒るのも尤もだという気にさせられる。しかも、Elizabeth Taylorが「いつ迄"punishment"(罰)が続くの?」と云うに及んでは、事実浮気があったように思えてしまう。Burl Ivesを交えての事実究明で、「実際には何も無かった」とElizabeth Taylorは主張する。普通ならこれだけでは説得力が無いところだが、何故親友が自殺したのか?を父が推理する道筋で、その親友がElizabeth Taylorを誘惑しようとして失敗し、それが明らかになることを恥じたあげくの行為であることが明らかになる。

Elizabeth Taylorが終始Paul Newmanを愛し、その父も愛している様が描かれているので、観客の同情は彼女に注がれる。最後に、間もなく訪れる死を知ったBurl Ivesに、「私のお腹に彼との赤ちゃんがいます」と伝える。ずっと不仲だったのでこれは嘘であり、多分その場にいた家族全員が嘘だと知ったはずだが、それを一番望んでいる義父は笑みを浮かべてElizabeth Taylorを抱擁する。

二階からPaul NewmanがElizabeth Taylorを呼ぶ。いつものような冷たい呼びかけでないことに気付いた彼女は、"Yes, sir!"と声を張り上げる。感動の一瞬。「嘘をついて御免なさい」と謝るElizabeth TaylorをPaul Newmanは抱き締め、父を喜ばせた彼女の言葉を事実とするためベッドに誘(いざな)うのであった。

義姉とその子供達がこれでもかこれでもかというように、騒々しく憎たらしく描かれていて、そこだけがわざとらしい。

(February 28, 2001)


【追記】

この映画に関する詳細な文献を見つけました。戯曲ではPaul Newmanとその親友はホモセクシュアルな関係として描かれていたが、1950年代のアメリカ映倫は一切のホモ関連と四文字言葉を許さなかったので、映画では同性愛に関する台詞を消してしまったのだそうです。その消された部分を補ってみますと…。高校のフットボール・チーム以来の親友同士がプロに転向しても同じチームに属していた。夫にとって自分より友達の方が大事らしいと感じた妻は、当然ながら同性愛を疑う。それで、「夫をほっといてくれ」と妻は夫の親友に頼む。男はいきなり妻に挑みかかる。妻は男が同性愛でないなら、夫も違うのだと知って安心する。しかし、ここでてごめにされたら夫が許してくれないと思い、妻はかろうじて男から逃げ出す…というのが底流にあるストーリィだそうです。

(April 17, 2001)





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