[Poison]

Camilla

『カミーラ/あなたといた夏』

【Part 2】

女性二人が旅に出て、男性二人が必然的にそれを追うというストーリィは良く出来ています。男性二人が母と妻の個人的行き方を認め、それによって女性二人が新たな愛に目覚めるというのも納得出来ます。女性二人の旅を契機に、全員が何か発見するわけです。セオリー的には映画の理想的な姿です。

夫に大仕事が降って湧いた時、当然妻も喜び一緒に自宅に戻ると思ったのに動かない。「キミの音楽はホビーに過ぎない(オレのは金を稼ぐ仕事だ。オレをサポートするのが当然じゃないか)」というのは、世界中の旦那に共通する考えでしょう。しかし、ホビーでも生きがいなら、旦那より大事ということもあるわけです。最後に、夫Elias Koteasもそれを理解します。

惜しむべきは、Jessica Tandyが息子に大金を要求し(実際には自宅の売価でしょう)、それをせしめて老友Hume Cronynの元へ走るという設定がちと漫画チック。こんなことをまじえなければ、結構しんみりしたいい映画になったことでしょうが。

まあ、Jessica Tandyの芝居を楽しむという意味ではいい企画でした。彼女は一見恐い顔(特に目)なので損をしていますが、ここでは心から噴出するエモーションによって、可愛い、夢見る老女を演じ切っています。

ラスト・シーンでJessica Tandyが水辺でヴァイオリンを弾き、Hume Cronynが踊るように浮かれるという姿が出て来ます。悪くはないのですが、一瞬彼らがジョージア州の島にいるのか?と思ってしまいました。本当はHume Cronynが住むナイアガラなのでしょうが、水を背景にしたために混乱したわけです。大瀑布をバックにすればよかったのに…と思いました。

Bridget Fondaはロック歌手には見えないし、か細い声の歌もまずい。Jessica Tandyがヴァイオリンを弾く場所(海辺、がらんとしたホテル、駅構内など)の設定はどれもいいが、彼女がヴァイオリンを弾けないのは一目瞭然なので、苦しい。出て来るクラシック音楽は素晴らしいが、劇伴としての映画音楽はまるで小津映画の音楽のよう。陳腐。

(October 03, 2003)





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