[Poison]

Brubaker

『ブルベイカー』

【Part 2】

'Cool Hand Luke'『暴力脱獄』(1967)との比較で云うと、こちらにはスターの数が少なく、ユーモアの要素もない。元が実話なので、そう派手な物語にも出来なかった…という辺りでしょうか。Robert Redfordに銃を持たせて脱獄囚狩りをさせたりしていますが、少しでもアクションの要素を入れたいという願望は理解出来るものの、刑務所長が一線に立つというのは疑問です。大統領が鉄砲を持って湾岸戦争に出掛けるようなものではないでしょうか?

刑務所改革、受刑者の人権問題というのは、'All the President's Men'『大統領の陰謀』(1976)のイメージを引き継ぎ、実際に反戦運動などをしていたリベラルなRobert Redfordに相応しいもので、彼は喜んで飛びついたと思われます。

刑務所ものによくある「対立の構図」(所長対囚人、看守対囚人、囚人対囚人など)がないため、物語がどこへ向かっているのかはっきりせず、何かダラダラと進展するように思えます。「政治家対所長」という対立はありますが、これは一介の所長には勝ち目がないので、対立には入らないでしょう。“実話”の足枷はどんな映画にも共通ですが、結末がドラマチックにならず、欲求不満を残します。「現実はそうだ」と納得はしますが、現実をなぞるだけなら何も映画を観に行く必要はないわけで…。

Robert Redfordが所長になる以前からDavid Keithはサングラスをかけていたりしますが(室内でも)、刑務所の中でこんなことが許されるのでしょうか?自治会役員の一人の囚人はアロハ・シャツに藁のカンカン帽をかぶっています。これもいいんですかねえ。

なお、この映画は三週間で撮り上げられたそうです。なぜかというと、Robert Redfordは自分の初監督作品'Ordinary People'『普通の人々』(1980)の準備に追われていたからだそうで。

Robert Redfordが最後に刑務所理事会に浴びせる言葉:「そんなに納税者の利益を考えるなら、経費節減のため、裁判所の裏で囚人を撃ち殺せばいい」というのは凄い台詞です。彼の憤りが溢れています。彼が役人ではなく、この刑務所改革のために雇われた民間人だから云える言葉で、だからこそ政治に愛想を尽かして歩み去ることも出来るのですが。

(April 28, 2003)





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