[Poison]

Boycott
『ボイコット/キング牧師の闘い』


【Part 2】

大概の場合、映画がTVの“ドキュメンタリー・タッチ”を真似する方法は頂けません。画面の揺れが激しく目障りです。私はTVカメラマンですが、手持ちカメラでも極力揺れを少なくして、あたかも三脚をつけているように撮るように務めます。“ドキュメンタリー・タッチ”を標榜する映画カメラマンがわざと揺らしたり、人から人へのパンのタイミングを故意にずらしたりするのは、TVカメラマンを愚弄している感じです。

この映画は白黒映像からカラーへ、カラーから白黒への転換をしばしば行ないますが、過去が白黒、現在がカラーというわけでもなく、非常に雑駁に行なわれるので、単に小手先で遊んでいるだけに見えます。

撮影はジョージア州で行なわれました。『ロング・ウォーク・ホーム』はちゃんとアラバマ州で撮影されているので、もう抵抗は無い筈です。どういう事情だったのか知りたいところです。

『ロング・ウォーク・ホーム』に無かった、空っぽのバスから見た歩く人々などの映像があり、ボイコット運動は過不足無く描けています。それでも、疲れて道路脇に座り込んでいる老人などの姿はなく、十分とはいえません。

このボイコットは381日続き、連邦最高裁の「バスの人種差別は違憲」という判決を勝ち取ります。これによって全米の公民権運動推進に拍車がかけられ、キング牧師は一地方のリーダーから全米のリーダーへと変身します。

映画の終りで、運動の発端を作ったローザ・パークスほかの黒人活動家たちがバスに乗ります。誇らしく前部から乗る時の、彼等の満足げな笑顔が素晴らしい。

(February 13, 2002)