[Poison] Southern Belles
(未)

【Part 2】

製作者たち(二人による共同脚本・共同監督)は赤地に青のバッテンがある南部連合軍の旗をあちこちにちりばめ、台詞を間延びして喋らせ、粗野で恥知らずの男を出せば南部らしいだろうと思ったようです。それはいわゆるクリシェ(定型)で、吊り目に眼鏡をかけ、カメラを持たせれば日本人という安易な発想と何ら変わりありません。

娘たち二人がベビィ・スィッターを頼まれているKevin(ケヴィン)という名の男の子は、知恵遅れ風でみんなで食卓を囲んでいる時にオナラをします。それも二回も。警官Justin ChambersがKevinを外に連れ出し、フットボールを投げっこしながら、「誰でもオナラはする。しかし、上手にやるんだ」と、奇声を発しながら誤魔化す方法を教えます。おかしくも何ともありません。Justin Chambersが立ちションをするシーンもあります。これらの下品なシーンを出せば南部っぽいだろうという考え方も不快です。

若い女の子二人がお金を貯めて夢を実現するというアイデアは悪くありません。しかし、お金集めのエピソードの大半はAnna Farisに任され、監督たちは「さあ笑ってくれ」と観客に強要するのですが、全然滑稽ではないので困ります。結局残るはLaura Breckenridgeのロマンスということになり、クレディット・タイトルで筆頭のAnna Farisは脇役みたいな存在になってしまいます。

Laura Breckenridgeが銃を射たせて貰うシーンがありますが、全く反動がないように描かれています。私はピストルを三種類ほど射たせて貰ったことがありますが、どれも反動が凄かった。銃の場合、気をつけないと肩を痛めることもあると聞いています。

ジョージア州の州都アトランタは、“夢の街アトランタ”みたいな扱われ方をされていますが、そのアトランタの魅力は描かれません。私が知っているアトランタはビジネスの街という感じで、若い女の子が憧れるような街には見えませんでした。ニューヨークとかサンフランシスコ、ロサンジェルスなどなら解りますが。

この映画の脚本が唯一ユニークなのは、そのクライマックスです(と云うほど派手ではないのですが)。アトランタ行きをやめた二人は、高速道路で町に戻って来ます。運転していたLaura Breckenridgeは車に備え付けのCB無線で警官Justin Chambersを呼び出します。警察に受け付けて貰えないので、制限時速を越えて走り出すと三台のパトカーに追尾されます。ついに警察無線に出た警官Justin Chambersは町の近くの道路上にパトカーを横向きにして道路を封鎖しています。二人の娘は逮捕され手錠をはめられますが、Laura BreckenridgeはJustin Chambersの前にひざまずき"Will you marry me?"と尋ねます。Justin Chambersは"No."と答えてがっかりさせ、「そういうのは嫌いだ」と云ってLaura Breckenridgeを立たせ、今度は自分がひざまずき"Will you be my wife?"と尋ねます。それを見ていたAnna Farisが手錠されたまま興奮してぴょんぴょん跳ね回り、三名の同僚警官たちがピストルや散弾銃をバンバーン!と射ちます。面白いのはここだけでした。

(March 06, 2007)





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