[Poison] Back Roads
(未)

【Part 2】

タイトル・バックは娼婦の生活の色んな場面のモンタージュ。街角に佇む娼婦、通りを歩く娼婦のハイヒール、近づく男の靴、並んで歩く男女の靴。ベッドで派手な色のパンティをはき、始業準備中の娼婦等々。

その後、バーで25セント硬貨をかけるしょぼい博打が紹介されますが、負け続けるTommy Lee Jones、他のテーブルから25セント硬貨を失敬するTommy Lee Jones、また博打に戻って勝ち続けるTommy Lee Jones、これらは彼の顔を出さず、彼の手元と声だけで描かれます。Sally Field登場の前にTommy Lee Jonesの顔を出したくなかったという感じでしょうか。非常に珍しい手法ですが、あまり意味があるとも思えません。

Sally Fieldの財布が盗まれ、結果的に二人が無銭飲食するハメになった後が可笑しい。Tommy Lee Jonesが彼女に「われわれは知恵と勇気で旅をするんだ」といいます。しばらく考えてからその意味を理解したSally Fieldは、大声でTommy Lee Jonesを罵りながらレストランを飛び出します。彼も大声で彼女に悪態をつきながら追いかけます。度肝を抜かれて口をあんぐりさせる客やウェイトレス。離れたところまで逃げた二人はやれやれと胸を撫で下ろします。しかし、そうは問屋が卸さない。車に乗った黒人のウェイトレスが追いかけて来て、ピストルを突きつけながら"Cash or credit card?"(お支払いは現金、それともカード?)と迫ります。このシナリオは凄い。拍手!Tommy Lee Jonesがなけなしの20ドル紙幣を渡すと、ウェイトレスはそのまま走り去ります。「釣りを寄越せ!」と追いかけるTommy Lee Jones。車は突如Uターン。たじろぐTommy Lee Jones。「釣りだわよ。受けとんな!」とウェイトレス。彼女は小額紙幣を撒き散らして去って行きます。大慌てで拾うSally FieldとTommy Lee Jones。急に交通量が増え始めて危険になるのでTommy Lee Jonesは諦めますが、Sally Fieldは最後の一枚まで執念深く拾います。この辺も二人の経歴・性格がうまく描き分けられています。ボクサーとして100ドル単位のファイトマネーに青春を賭けて来た男と、20ドル単位で身を売っている女との。

「L.A.でマニキュアで食って行くのか?」と驚くTommy Lee Jonesに、Sally Fieldが「30,000マイルも旅して、見知らぬ街角で客の袖を引くと思ってんの?」。

生き方を変えられるか否かという議論の際に、Tommy Lee Jonesが「マニキュアされたからって、おれが紳士になるもんでもない。人間は変わらんよ。あんたもだ」と云います。これに対し、Sally Fieldは「あたしがおぎゃあと生まれた時、お医者さんは売春婦を出産させたわけじゃない。最初からの出来損ないじゃないのよ」ね?結構いい台詞が多いです。

テキサスの小さな町へ着いた時、Sally Fieldは泊まってもいないホテルのフロントから便箋と封筒を貰い、Mobileの町の息子に宛てて手紙を書きます。町で客を取ったため、町の売春婦を束ねている女ボスが拳銃を持った用心棒と共にやって来て、Sally Fieldが売春で得た金とTommy Lee Jonesがボクシングで得た金を全部巻き上げ、Sally Fieldの息子への手紙を声を出して読みます。「私の坊や、あなたに二人のママがいると知っても驚かないで。愛してる…だって?この子を愛してるんなら、こんな手紙出しちゃ駄目よ」そう云って、女ボスは手紙に火を点けて燃やしてしまいます。なかなか訳が分った女です。「あんたと特別レートの取り引きをしましょ。あんたの儲け100%の100%をあたしが頂く。あはははは!」結局、全てを奪って去って行きます。したたかです。

Sally FieldとTommy Lee Jonesは金を得ようと次から次へ色んな試みをするのですが、全てうまく行きません。うまく行くと、そこで映画が終ってしまうからでもありますが、それが脚本家の手練手管に見えないように、うまく処理されています。達者な脚本です。

(December 21, 2007)





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