[Poison] The Apostle
(未)

【Part 2】

「Robert Duvallは喋り詰めの熱狂的牧師を熱演している」と書きましたが、残念なのは、彼は歌が上手くないこと。黒人牧師、黒人説教師は歌手でもあります。「ゴスペル・チャーチ」における礼拝は静寂の中の敬虔な祈りではなく、リーダーの絶叫に対して会衆が立ち上がり、手拍子や踊りで応答するエクサイティングな礼拝です。牧師も説教師も歌えなくてなりません。Robert Duvallに欠けていたのは、唯一その点です。

知り合った地元ラジオ局のD.J.の好意で、彼の教会の宣伝をすることが出来、それが会衆を集めるきっかけになります。人気が出始めた頃、Billy Bob Thornton(ビリイ・ボブ・ソーントン)演ずる無遠慮な男が礼拝中に乗り込んで来ます。この男は「アポッスル」と自称する人間に懐疑的で、それに腹を立てたRobert Duvallは喧嘩を買って殴り合いを展開。負けた男は翌週ブルドーザーで教会破壊を目論みます。しかし、Robert Duvallの機転と沢山の会衆をリードするパワーに圧倒され、男は涙を流しつつ行いを悔います。この様をラジオのD.J.が実況中継しているという趣向が面白い。

Robert Duvallの人気を高めたのもラジオなら、彼の居場所を捜していたテキサス警察に伝えたのもラジオ。こうなることは容易に読めますが、でも中々うまく処理されています。最初にラジオ・スタジオで短く説教のデモをします。これで数人の会衆が集まるのですが、Robert Duvallを支援する老牧師は「ラジオではあんたが白人とは分らない。みんな黒人牧師だと思ってる筈だ」と云います。これは、この映画の前年に公開された'A Family Thing'『ファミリー/再会のとき』という、やはりRobert Duvall主演の作品のテーマに呼応しています。'A Family Thing'では、彼は白い肌をしているが母親は黒人だったという役を演じていました。こういう白黒が引っ繰り返る役が好きみたいですね。

テキサス州に送り返されたRobert Duvallは、エンディングで道路の草刈り(刑務所の屋外労働)をさせられています。“特技”を活かしてエンヤコラならぬワークソングのリーダーとなっているのですが、全てイエスを讃える文句なのが可笑しい。牧師の“リサイクル”で、チェイン・ギャングの音頭取りというのは最高のユーモアです。

(March 21, 2001)





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