[Poison] Angel Heart
『エンゼル・ハート』

【Part 2】

鶏のイメージが沢山出て来ます。
・Robert De Niroが食べる茹で卵
・娘Lisa Bonetを訪ねた時に足にまとわりつく鶏
・ジャズ酒場にある飾りの鶏の足
・ヴードゥーの儀式で首を裂かれる鶏
・馬小屋の隣りの鶏小屋
・闘鶏
・チキン・ガンボ(ルイジアナ風スープ)の大鍋

で、これはヴードゥーのシンボルなのかと思って'Encyclopedia of Southern Culture' (The University of North Carolina Press, 1989)という本で調べてみました。

「ヴードゥーは西アフリカを起源とする。アメリカに伝播したのは18世紀にハイチからフランス人達がルイジアナ州に奴隷を運んでからである。ヴードゥーは今なおハイチでは公に実施されているし、ニューオーリンズや南ルイジアナには深い根を下ろしている。ヴードゥーの術師は“ドクター”と呼ばれ、彼等は人々がヴードゥーを信じようが信じていまいが、人々の生死に力をふるう」などと詳細な説明がありますが、ヴードゥーにおける鶏の使用については何ら触れられておりません。多分、この映画の鶏の扱いは独特のもののようです。

オーディオでは心臓の鼓動を使っているのが特徴ですが(これは別に目新しくない)、不安定な構図、陰影の多い画面、そして換気扇やテープレコーダーなど回転するもの、螺旋階段など円形のものを多く取り入れています。しかし、それにどういう意味があるのか、私には伝わって来ませんでした。

不思議なのは天候です。ニューヨークは雪だったのに、ニューオーリンズでは大雨になります。雨期の夏ならともかく、これは異常ではないかと思い、ニューオーリンズに住むカミさんの姉Alison(アリスン)に聞くと、「そういうこともあり得る。冬に土砂降りの年もあり、カラカラの冬もあり、一定していない」とのこと。

論議の的となったMickey RourkeとLisa Bonetのベッド・シーンですが、二人の裸体はともかく、安宿の雨漏りがどんどんひどくなり、二人の身体に飛沫がかかるようになります。それがいつしか、血の色に染まって来るのが凄い。こんなイメージ・ショットは初めて観ました。これは一生忘れられないシーンになることでしょう。

もう一つ、話題になったのはLisa Bonetで、彼女はアメリカで有名な'Cosby Show'というコメディ・ショーで、主役のコメディアンBill Cosby(ビル・コスビィ)の明るく健康的な娘を演じていたのです。それがいきなりオッパイ丸出しでベッド・シーンを演じたので、当時は大騒ぎだったようです。幸い、この後も彼女は'Cosby Show'に復帰出来たそうです。

私が気になったのは、Mickey Rourkeが手に怪我をした後消毒もしないで汚い包帯のまま数日過ごしていること。あれでは化膿したり、細菌に冒されたりするでしょうに。私には耐えられません。

オカルト的結末は受け入れ難いものがありますが、そこまでのストーリィ・テリングと凝った映像に免じて許しましょう。

(July 07, 2001)





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