[Poison]

Andersonville

(未)

【Part 2】

実話に即しているわけですから、“大脱走”も北軍同士の大乱闘や裁判劇も実際にあったことなのでしょう。しかし、「何だ、『大脱走』か」と思ってしまうのも事実であり、南軍をやりこめるのではなく北軍同士の内輪揉めというのも、見ていてすっきりしません。

何か、妙にドラマチックにしようという魂胆が見えてしまうような気がします。上の数例はそういう素材です。しかし、この収容所の悲惨さを表現するのであれば、実際そうもあったろう衛生状態、死んで行く人々の描写などを積み重ねるという手法でも出来たろうと思います。勿論、映画の長さは110分が限度でしょう。

この映画で唯一ヒロイックなシーン。兵士不足の南軍は捕虜全員を集め、「南軍兵士として闘うことを誓えば、相応の褒美が与えられる。いいニュースだろう。返事を聞かせて貰おう」と云います。軍曹Frederic Forrestが「閣下、発言をお許し下さい」と進み出てるので、南軍大佐はニコニコして「許す」と応えます。軍曹は「マサチューセッツ小隊、整列!右へ倣え!右向け右!進め!」と号令して、南軍大佐を尻目に勝手に戻って行きます。残った群衆からも、各隊の指揮官が号令を発して小隊ごとに行進して去って行きます。弱った身体の兵士たちにもかかわらず、ここでは毅然と行動します。'The Bridge on the River Kwai'『戦場にかける橋』(1957)でAlec Guinness(アレック・ギネス)が演じた英国軍人魂に匹敵するヤンキー魂、軍人魂を描いた名場面と云えるでしょう。

「南北両軍の捕虜の交換が始まる」ということで、生存者たちは全員収容所を出て行列を作って歩き出します。しかし、交換は行われず、単に別の収容所に移されただけだったという、悲惨さの駄目押しのような字幕が出ます。その背景は現在のAndersonvilleにある1,2912個の墓碑。延々果てしなく立っています。辛い。

(May 17, 2003)





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