[Poison]

Sweet Home Alabama

『メラニーは行く!』

【Part 2】

好き勝手を云わせて貰うと、私はReese Witherspoonがあまり好きではありません。花王石鹸のロゴのような顔が気に入らないのです。よくまあ、看板役者になっているものだと感心します。これが隣りの州のアラバマの話でなければ、多分観なかったでしょう。

また、私はこういう話は嫌いなんです。結婚式当日に破談にするという話。アメリカ人は好きですねえ、こういうの。古くは'The Flame of New Orleans'『焔の女』(1941)、'The Graduate'『卒業』(1967)、そして'The Wedding Planner'『ウェディング・プランナー』(2001)、みんな同じです。アメリカ人にはいいのかも知れませんが、日本人の私には駄目です。

アメリカでは好き合った二人がラス・ヴェガスの教会かどっかで二人だけで結婚し、後で家族や友人に知らせるというスタイルも有りのようですが、日本ではまだまだ家と家との結婚という要素が強いですよね。豪華な披露宴会場を予約し、大きな包みの引き出物を用意する。花嫁、花婿ともほぼ同数に近い親戚・友人を招く。花嫁衣装や嫁入り道具、新婚旅行の費用もあります。結婚式の出費は莫大であり、当日万事準備が整ったところでキャンセルするのは大変です。というか、日本人にとっては不可能に近いことでしょう。相手と相手の家族に与える恥辱、親戚・友人に与える迷惑は途方も無いもので、「家の恥」として終生罵られることを覚悟しなくてはなりません。全てのキャンセルに伴う煩雑な手続きを考えると気が遠くなります。普通の日本人は、たとえ“真実の愛”が他所にあると気づいても、「もう面倒臭い」と諦めて結婚することでしょう:-)。

アメリカには引き出物などというものはないので、これを返品する必要はありません。結婚式前夜の内輪のパーティの費用は花婿サイドが持ち、結婚式と披露宴の費用は花嫁サイドが持つのが普通だそうです。この映画では教会を使わず、神父を披露宴会場に呼んでいます。神父に数百ドル、南部風旧家の借り賃、椅子を並べ飾り立てた業者、パーティ料理の仕出しとグリル・のコックなどに計数千ドルはかかります。これらを貧しい花嫁の一家が持つことは出来ず、ニューヨーク市長とその息子が支払うのでしょう。まあ、彼は金持ちだから文句は云いませんが、本当ならこういう出費を無駄にしたとして訴訟問題になっても仕方がないところです。

Reese Witherspoonはダイアモンドの婚約指輪を返しませんが、あれはどうなったのでしょう?返すんでしょうね、当然。

花婿の母親Candice Bergenが怒るのは当然です。母親としても怒って当然ですし、政治家としても顔に泥を塗られたわけですから、腹立ちは二重です。私は彼女に味方します。Reese WitherspoonにCandice Bergenを殴る資格はありません。

しかし、です。'Sweet Home Alabama'という題名で南部を肯定し、魅力的な前夫、間抜けた顔の求婚者が配置されていれば、こういう結果になることは、映画が始まってすぐ誰にでも読めてしまうことです。別なタイトルで、男優二人の役をチェンジしたらどうだったでしょうか?Reese Witherspoonは二枚目の求婚者を捨て、ダサい田舎者を選ぶ。これはかなり尻すぼみの印象をもたらすことでしょう。ダサい田舎者ではバラ色のエンディングにならず、観客は欲求不満になるからです。つまり、配役によるトリックがここにあるわけです。

私は結婚式場で花嫁に去られる男性の気持ちを無視出来ません。こういうストーリィは不愉快です。

(October 09, 2002)





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