[Poison]

Live and Let Die

007/死ぬのは奴らだ

【Part 2】

この映画で初めてというものがいくつかあります。勿論、Roger Mooreのシリーズ初出演が第一ですが、いつも凝っているメイン・タイトルが黒人女性ばかりというのも初めてです。黒人の巨魁も初めて。James Bondの自宅が出ること、Qが登場しないこと、悪党の一人が最後に生き延びるのも初めてです。

Qは登場しませんが、彼が製作した小道具はいくつか出ます。しかし、最近の小道具がSONY Designのように磨き抜かれた完成度を見せているのに対し、この頃のは素人がやっと作ったラジコンのコントロラーみたいな感じで、非常にダサい。当時はカッコ良かったのでしょうが。

タイトルにかぶる主題歌はPaul McCartney(ポール・マッカートニー)の自作・自演。多分彼を引っ張り出すためでしょうが、音楽監督をGeorge Martin(ジョージ・マーティン)に依頼しています。George MartinはThe Beatles(ザ・ビートルズ)の生みの親として知られているロック系のプロデューサーです。彼は1994年に奈良・東大寺で行なわれた「あおによしコンサート」の音楽監督として来日。私はコンサートのリハーサルのドキュメンタリー番組を担当しましたので、George Martinの傍で十日ほど過ごしました。長身・白髪の立派な紳士でした。

Voodoo(ヴードゥー)の儀式、Tarot占い、蛇、ワニなどで南部らしさ、おどろおどろした感じを出そうとしていますが、こういう暗い感じは007シリーズには似合わないような気がします。こういうものよりも、二度出て来るニュー・オーリンズ名物のジャズによる明るい葬列のトリックの方が、気が利いたアイデアです。

この映画の失敗は悪役にYaphet Kottoを選んだことです。彼は顔が恐ろしくないし、陰謀を企むほど頭が切れるように見えません。品も無く、到底Solitaireを情婦に出来るタマには思えません。しかし、だからといってBondがすぐ寝取ってしまうというのもどうでしょうか。SolitaireもBondも節操がないという感じです。

Roger Mooreの代りに義経の八艘飛びのようにワニの背中を歩いて渡ったのはRoss Kananga(ロス・カナンガ)というワニ園の持ち主。彼の名はスタント・コーディネーターとしてクレディットされています、製作者たちは彼を気に入り、それで悪人の名をKanangaにしたのだそうです。私もワニ園を取材したことがあり、その時に面白いことを聞きました。ワニが大口を開いているのは、鳥などが飛び込んで来るのを待っているのですが、舌に何か触ると瞬間的にパタンと閉じるようになっています。口に手を入れても舌に触らない限りは大丈夫。園長が棒で舌に触って、閉じる速さを見せてくれました。ワニに追われた時に棒切れで口につっかい棒をするという漫画がありますが、あれは実際に可能だそうです。ぜひ一度、お試しください:-)。

(April 02, 2002)





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