March 01, 2026
●努力しないで80を切る方法(4/5)
・興奮を鎮めよ
私達にとって興奮抜きのゴルフというのはあり得ません。先ず、ラウンド前夜から興奮して寝付けないし、ゴルフ場へ向かう車でも自然にアクセルを踏み込んでしまいます。到着して練習中の人々が目に入ると、「早く追い付かなきゃ!」と靴を履き替えるのももどかしく自分も練習場へ駆け出します。リラックスして談笑しているように見えても、実は上の空で半分しか耳に入っていません。内心では「優勝したい!ハンデも十分、調子も絶好だ」とか、「今日こそ70台!」などの決意が渦を巻いています。
'The 8 Traits of Champion Golfers'
by Dr. Deborah Graham and Jon Stabler (Simon & Schuster, 1999, $25.00)
スポーツ心理学者デボラ・グラハム博士は'The 8 Traits of Champion Golfers'(チャンピオン達の8つの特徴)の中で次のように書いています。
「ゴルフではほどほどに興奮するのが望ましい。リラックス状態と緊張状態のちょうど中間ぐらいが適当。
興奮しているプレイヤーは自分が興奮していることに気付かない。以下は興奮している徴候の数々である。頭を前方に傾け、首が抜けるように伸ばす。両腕は身体に近く、両手は拳を作るか、コインをジャラジャラさせたり、クラブをきつく握り絞める。上半身は硬直して前のめりになるため、腰痛の原因を作り出す。歯は噛み締められ、唇は固く結ばれている。チューインガムは急速に噛まれる。目の周りの筋肉は寄せられて眉間にシワを作る。呼吸は速く、短くなる。
こうした肉体的変化はスウィングを速く短くさせ、パッティング・ストロークをパチンと打ったり、プルやプッシュの原因となる。大方のゴルファーは、スウィングのミスを全てメカニカルな原因と考えがちだが、実は真の問題点は興奮状態にあるのだ」
1996年のマスターズ・トーナメント当時グレッグ・ノーマンのスウィング・コーチだったブッチ・ハーモンは、ノーマンがあの六打差のリードを失って惜敗した最終日について次のように述べています。「ノーマンはスウィングのリズムを失っていたようだ。パッティングが速く、歩くのも早かった。彼自身、メカニカルな問題は無かったと云っている」つまり、彼の興奮状態が問題だったわけです。
'Golf's Mental Magic'
by Dr. Guy S. Fasciana (Bob Adams Inc., 1993, $12.95)
'Golf's Mental Magic'(ゴルフのメンタル・マジック)の著者ガイ・ファスキアナ博士の以下の指摘は、そのままグレッグ・ノーマンの悲劇に当てはまります。
「ストレスがゴルフに影響を及ぼすと、軽率で非生産的な決断をしがちになる。筋肉の円滑な動きの反応速度が鈍くなり、ミスを恐れ、自分の実行能力を疑い始める。急速に疲労し、集中能力は低下する。
緊張状態は筋肉を硬化させ、荒々しい力を生み出す傾向がある。あなたが重量挙げの選手なら、それもいいだろう。しかし、難しいグリーン上でデリケートなパットをしようとする場合には、これは最悪である。筋肉の緊張は、多くのショットに必要な“フィーリング”を失わせてしまう」
精神や筋肉をリラックスさせるのが腹式呼吸であることはよく知られています。片手をお腹に、片手を胸に置いて、大きく呼吸してみましょう。横隔膜を使って、お腹を膨らませる呼吸でなくてはなりません。非常に重要なことは息を吐く長さを、吸う時の倍にすることだそうです。この腹式呼吸をゆっくり繰り返せば、心も身体もリラックスします。緊張下の胸だけの早く浅い呼吸、特に息を止めたりすることは、軽い酸欠状態を招き、その後の動作を速めてしまう原因となります。
'Mind Under Par'
by David F. Wright, Ph.D. (Behavior Change Media, 1997, $15.96)
'Mind Under Par'(アンダーパーを目指す心)の著者デヴィッド・ライト博士は次のようなメソッドを紹介しています。
「息を吐きながら、全身を細かく分け、緊張しているポイントがないかどうか探す。額から始めて、首、肩、胸、背中、両腕、お尻、両脚、両足へと下降する。これをボディ・スキャン(身体走査)と呼ぶ。全身を走査しながら、緊張点を深呼吸によってリラックスさせて行く。これはゴルフだけでなく、人生のどんな場面ででも有効である」
・その日の第一打を成功させる
ラウンド最初の一打ほど私達を緊張させるものはありません。あるコンペで、かなりのベテラン・ゴルファーが空振りをしたのを見たことがあります。こういうのを見ると、「自分もひょっとして?」と余計緊張してしまいます。
なぜ、その日の第一打にこうも重圧がかかるのでしょうか?勿論、「うまく打てるか?」という不安があります。「今日こそ優勝!」という期待もあるでしょう。「最近の上達ぶりをみせてやる」という見栄もあれば、「大勢に見守られている中で恥をかきたくない」という哀れな自尊心もあります。多分、それらのいくつかが組み合わさった緊張であろうと思われます。
'The Complete Golfer'
by Tom Dorsel, Ph.D. (Allyn and Bacon, 1996, $19.00)
'The Complete Golfer'(完璧なゴルファー)という本の中でスポーツ心理学者トム・ドーセル博士は、次のように示唆します。
「最初の一打は、その日一日のドライヴァーとの付き合いを決定する重要なものである。プレイ前の練習でも、その最初の一打に焦点を合わせる。無造作に目標を選ぶのではなく、No.1を想定した目標を選んで練習する。他のクラブの練習が終っても、再度No.1に合わせたドライヴァー・ショットを数分間練習する」
現シニアPGAツァー・プロのトム・ワトスンは自著'Strategic Golf'(戦略的ゴルフ)において「週末ゴルファーの大半は先ずドライヴィング・レンジに行き、次いでパッティング・グリーンへと移動する。これでは折角温まった身体がティー・ショットまでに冷えてしまう。練習の最後はドライヴァーであるべきだ」と云っています。なるほど、云われてみればその通りです。私達はロング・ゲームのスウィングに自信が無く(パットはどうにか格好がつくが、ウッドやアイアンでボロが出ると目立つので困る)、ウッド、アイアンの練習を済ませて時間が余ったらパット…という傾向があります。その日の第一打を成功させるには、パットの練習から始め、チップ・ショット、そしてミドル・アイアン…ドライヴァーというのが実践的のようです。
ドーセル博士の助言は続きます。
「No.1に向うまでに、数分間努力してスウィングの留意点あるいは素晴らしいショットのイメージに集中すること。
No.1ティーに立つと、『とにかく、どこか前方のフェアウェイかショート・ラフ』というような曖昧模糊な目標でヒットしがちになる。ぼんやり宙を見るのではなく、グリーンを狙う場合にピンを目標にするように、もっと地点を特定すること。
ワッグルしながら、スウィングの留意点を思い浮かべる。慌てて打ち急がないこと。とはいえ、失敗を予期するような雑念が浮かんで来る前に打ち終ること。
最良の方法は、ドライヴァーで150ヤード打つという方法だ。理想的な軌道は必要だが、距離を限定する。このイージーなスウィングが、かなり遠くへ飛ぶことにびっくりするだろう」
最初の一打の重圧を回避する方法の一つに、「まだ練習場にいると思え」というのがあります。100、150、200というような看板が点々と立っていると思い込むのです。「練習なのだから失敗しても構わない」、「あの150の看板に向って飛べばよい」と考えるわけです。
'Going Low'
by Patrick Cohn, Ph.D. (Contemporary Books, 2001, $22.95)
この本の著者スポーツ心理学者パトリック・コーン博士は次のように述べています。
「何もしないで第一打を不安がっているのは最悪である。第一打から思念を遠ざけ、パートナーと会話をする。自分の番になったらプレショット・ルーティーンを慌てずに完了させる。いいショットを視覚化すること。
腹式の深呼吸をする。吸い込みながら肩を耳に届くまで上げ、吐きながら肩を下ろして緊張を解く。グリップも強く握ったり、リラックスさせたり…を繰り返す。ガチガチのグリップは不可。
フェアウェイを捉えることに焦点を合わせる。第一打でバーディを達成出来るわけではない。『いいショットを打つために必要なことは?』と自分に問いかける」
(March 01, 2026)
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