September 10, 2025
●パワーを身につけるタイヤ・ドリル
英国のプロHenry Cotton(ヘンリィ・コットン、1907~1987)は三度も全英オープンに優勝した名人ですが、華奢な身体だったため飛距離が不足気味でした。彼は練習熱心であると同時にゴルフについて深く考える人でもあったため、いくつか他のゴルファーが考えもしなかった練習法によって強靭な腕と身体を構築しました。
’Thanks For The Game’
by Henry Cotton (Sidgwick & Jackson, 1980)
「ゴルフ場の隅の深いラフの部分を見つけ、クラブを鎌のように使って何時間も草を刈った。これはハードな練習法だったが役に立ち、私はトーナメントで優勝し始めた。
ゴルフ場の手入れが行き届くようになって、十分な長い草が見つからなくなった。私は左右の手一本ずつで交代にボールを打った。これはよいトレーニングで、4番ウッドを地面から毎回200ヤード打てるようになった。
ある日、プロ・ショップの裏に一個のタイヤが捨てられているのを見つけた。誰が捨てたのか解らないが、その人物はゴルフ・ゲームへの凄い貢献者だったと云える。私はプロ・ショップから古いアイアンを引っ張り出し、タイヤを打ち始めた。それは私に複雑な思いを与えた。一つには素晴らしい発見をした喜び、その反面タイミングが遅かったことへの悔しさ。なぜなら、当時私は既に競技生活からリタイアしていたからだ…。
1968年、私はポルトガルに設計した新しいコースの傍に移り住んだ。タイヤを使う練習法はプロ志望の生徒たちに熱心に受け入れられ、たちまちゴルフ界に広まった。
このタイヤ・ドリルは強靭さと柔軟性を開発するだけでなく、インパクト・ゾーンでのスピードを増す練習としても役立つ。私はヘッド無しのスティール・シャフトを用いて鞭のように打つ方法を案出した。ヘッドが無いとクラブはとてつもなく早く動く。生徒たちはしっかりしたグリップでタイヤに当たる手のショックに集中する。
あまりにきついグリップをしていると、スウィング速度を遅くしてしまう。かといって、緩過ぎるとクラブがスリップする。クラブを早く動かすに必要なグリップの最適のきつさを見つける必要がある。
このドリルを長時間行い、その後すぐラウンドを始める人がいるが、それはよくない。筋肉にはハードな鍛錬が必要だが、その結果を最高に発揮する前に休息が必要なのだ。
あなたの個人的ゲームに相応しい練習法を見つけることは、成功への鍵である」
今ではインパクト・バッグというものが売られていますが、買えば50ドルもします。古タイヤならゴミ捨て場などで見つけられるでしょう。
また、ヘッドのないクラブがゴルフ場に捨てられていることも珍しくありません。ゴルフ場のゴミ箱をチェックしてみて下さい。私は拾ったヘッド無しクラブを二本も持っています。
「生体力学的鍛錬ヴィデオ」(tips_50.html)によれば、「運動は多くて一日おき、少なくて週に二回」…という制限を設けています。中間の日に筋肉の組織細胞を成長させるためだそうです。
【参考】「草を抉(えぐ)る」(tips_168.html)
(September 10, 2025)
●下半身がパワーの源泉
以下は「Percy Boomer(パースィ・ブーマー)の逆説的ゴルフ」(tips_12.html)の一部ですが、私自身再読して感銘を受けたので再紹介します。
パースィ・ブーマーの'On Learning Golf'『ゴルフの習得について』(Alfred A. Knopf, Inc., 1946, $22.00)は名著として知られています。「しっかりと地面を踏ん張る足と脚によるスイングがゴルフの基本。手と腕ではない。手と腕はゴルフ・ショットのパワーを生み出す要因ではなく、クラブヘッドと下半身の連結点でしかない。パワーは足、脚、そして腰から来るものである」というのが彼の理論。
それを実証する人物が登場します。ターカンド・ヤングというお爺さんで、当時80歳に近い年齢なのに、ほぼパースィ・ブーマーの飛距離に負けない完璧なティー・ショットを放っていました。
パースィ・ブーマーがヤング爺さんに尋ねました。どのようにして、かくもゆっくり、スムーズなスイングで、ごく僅かな力で結構な飛距離が出せるのか?ヤング爺さんの答えは次のようなものでした。
「16歳の時に、ゆっくりした動きが腕力を凌ぐ二つの事例を発見した。一つはハンマー投げ、もう一つはクリケットのボールを投げる動作だ。これらを体験してから、私は出来るだけゆっくりスイングすることにした。パワーは腰の下から得る。その結果、力まないでかなりの距離を稼ぐことが出来るようになった。
ゆっくりしたスイングはかったるく見えるが、パワーはちゃんと内包されている。パワーは手と腕から来るものでないのは確かだ。ワンピースでバックスイングし、タイミングが正しければ、誰でも力むことなくボールをかなり遠くにもっていける。おまけにミスも無い。長い経験から、それは断言出来る」
「力まず、かったるいようなスイングが長い飛距離をもたらす」というのは逆説的ですが、しかし実話ですから説得力があります。このヤング爺さんはアーニイ・エルスやスティーヴ・ストリッカーのモデルのようなゴルファーですね。
(September 10, 2025)
●優雅なリズムがパワーを生む
LPGAツァーほかで計30勝し(うち13のメイジャー優勝)、ゴルフ名誉の殿堂入りしているMickey Write(ミッキィ・ライト、1935~2020)のtip。
'100 Classic Golf Tips'【LPGA version】
edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2008, $24.95)。
「スウィングの良いリズムは、ヒッティング・ゾーンで最大のスピードに達するために極めて重要である。
私は、良いリズムを開発する最良の方法を発見した。それはボールに歩み寄る前に、心の中にスウィングの明瞭なメンタルなイメージを染み込ませることだ。単に心の中にイメージを生じさせ、それからそのイメージを身体の動きに転化させるのだ。
私は次の三つのどれかをイメージするのが常だ:
・子供が乗ったブランコが行ったり来たりする
・ソフトボールの投手の投球
・サム・スニードなどゴルフ名人のスウィング
どのイメージからも、私はパワーとクラブヘッド・スピードのスローで優雅な積み上げを得ることが出来る。突如加速する一点などというものがあるべきではない」
(September 10, 2025)
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