December 01, 2025
●LPGAプロが分析するBen Hogan(ベン・ホーガン)のスウィング
LPGAツァーほかで計28勝してゴルフ名誉の殿堂入りを果たし、長くゴルフ・チャネルで解説を務めたJudy Rankin(ジュディ・ランキン、1945~)の分析。以下の記事で「女性」とあるところは「アマチュア」と読み替えて下さい。
'100 Classic Golf Tips'【LPGA version】
edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2008, $24.95)
「私の父は大のBen Hoganファンで、特に彼の集中力を称賛し、私にも同じように集中することを望んだ。父はフェアウェイとグリーンを狙うことにこだわり、私もそう育てられた。私の最盛期はフェアウェイとグリーンを狙うことに専念したものだ。
1950年代初期、多くのゴルファーがBen Hoganのスウィングの型を模倣した。学ぶべきものが沢山あったのだから当然だ。
1) Ben Hoganのバックスウィングの最初の部分は、腕とクラブが楽に伸ばされ、かなりワイドなスウィング弧を形成する。女性が広い弧を作ろうと努力すると、クラブと共にボールから遠ざかってスウェイしたりする。Ben Hoganの体重は両足の間に留まっており、両腕に緊張の兆しは全くない。教科書的と云ってよい。
ワイドなスウィング弧はクラブヘッド・スピードとパワーを生むことを助けてくれる。それを獲得するには、左腕(肩からクラブヘッドまで)をクラブの延長だと考え、バックスウィング開始後数フィート(30~60センチ)は曲げずに真っ直ぐなままにすることだ。体重が右腰の外へさまよい出さないように気をつけながら、両腕を楽に伸ばす。
2) Ben Hoganの両手が腰の高さに達する頃、クラブはほぼセットされている。クラブシャフトと彼の左手は90°に近い角度となって、ダウンスウィングでパワフルなスピードを爆発させるための梃子を形成している。
多くの女性は手首と前腕が弱いので、手首ではなく肘の蝶番を用いる。これは著しく崩れやすく、スウィング弧を狭くしてしまう。
クラブをコックするのは手首の部分であり、両手がクラブを支える。スウィングのトップでは、両手はグリップの下となり、クラブは重くはなくとても軽く感じるべきだ。もし、クラブが軽く感じられたら、ダウンスウィングを始めるのによい位置につけていると云える。
3) この段階で私が感じることは、Ben Hoganはバックスウィングの間中両足と腰が非常に静粛だということだ。体重が僅かに右へ移動し、肩は回転するけれども、ボールから遠ざかるスウェイというものは見られない。
概して、女性は男性よりも身体をフルにターンしがちである。男性がバックスウィングで腰の回転を抑制し下半身の抵抗を作り出してパワーを生むのにくらべ、女性は足も脚も腰も全てをターンさせてしまう。
左踵を上げるのは悪いことではない。あなたがバックスウィングの回転を完結させるために必要とするのであれば…。
Ben Hoganは左肩を顎の下へ廻し、素晴らしいフル・ターンをしている。だがこの段階で最も顕著なのは、彼の右膝が柔軟性を保ったままアドレス・ポジションの状態とほとんど変わっていないということだ(微かに動いてはいるけれど)。膝はバックスウィングの間中どっかと安定しており、体重(とパワー)を身体の右サイドに蓄積し、ダウンスウィングでターゲット側に移す準備を整える。
もし、あなたがこの段階で右膝を伸ばしてしまうと、バックスウィングのトップで上体がターゲット側に傾いでしまうリヴァース・ピヴォットとなる。その状態からは体重は後方へ向かうしか行き場所がなくなってしまう。バックスウィングで右膝をやや曲げたままにすることに集中せよ。スウィングのトップに達した時、体重が右の踵に乗るのを感じるべきだ。
4)、5) インパクト後、Ben Hoganの右踵は地面から浮き上がり始める。彼の頭はボールの飛行を追って廻り始めるものの、彼のポスチャーを変えるところまではいかない。いかに身体をコントロールしているかの素晴らしい見本だ。これは重要なことである。ボールをソリッドに打つためには、ポスチャーを維持しなくてはならない。別の言葉で云えば、アドレスで構築した身体の角度をショットする間じゅう保たなくてはいけない。多くの女性はヒッティングの早期に頭や背骨を持ち上げてしまい、トップ・ショットやゴロを打つ結果となる。
Ben Hoganの体重は既に右脚に移っており、腰は廻って両腕が自由に通過出来るよう道を空けている。彼の頭と上体はボール後方に留まっている。これがストレートなボールを打つ鍵である」
ついでなので、David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)のコメントも。
'Classic Golf Instruction'
edited by Christopher Obetz (Rizzoli, 2005, $39.95)
「1) 腕が先行し、次に身体が捻じられる。この両者の関係は完璧だ。
2) シャツやズボンの皺(しわ)によって捻転の素晴らしいフィーリングが窺える。
3) これはリラックスした捻転と呼ぶべきものだ。胴体はフルに捲き上げられているが、腕はソフトであり、少しも緊張した感じは見られない。Ben HoganやErnie Els(アーニィ・エルス)などはこのリラックスした捻転が出来、イーズィにスウィングしている印象を与える。これはエフォートレス・スウィングの典型である。この状態は荘厳であるとさえ云える。シンプルかつスムーズに見えるが、クラブにはインパクトへと向かうエネルギーが漲っている。
(December 01, 2025)
●早めのコックがレイト・アンコックを導く
現在主流のメソッドはレイト・コックです。肩を廻し、トップに達した時点でコックするというもの。スイング・コーチのハーヴィ・ピーニックに云わせると、「コックは自然のままになるだけで十分。意図的にやる必要は無い」そうですが、'Pure Golf'『ピュア・ゴルフ』(Doubleday & Company, Inc., 1976)という本において、ジョニイ・ミラー(写真)は正反対の早めのコックを推奨しています。
「左腕だけでクラブを振ってみれば分るが、バックスイングで右の腰を越える前にコックが始まる。右腕だけでやっても同じ。早めのコックが自然の動きであることの証明である」
ジョニィ・ミラーが説く早めのコックのメリット:
1) シンプルである。レイト・コックは腰、肩、腕の動きと同時進行で、かなり複雑である。
2) 早めのコックはレイト・アンコックに繋がる。トップ近くでのコックは、早めのアンコックを誘発しやすい。若く、強靭な脚の持ち主なら、レイト・コック、レイト・アンコックを実現出来るが、普通のゴルファーには無理である」
'Teed Off'『ティード・オフ』(Prentice-Hall, Inc., 1977) の著者デイヴ・ヒルは、1969年のヴァードン・トロフィー(年間平均最少打数を記録したプロに与えられる賞)の受賞者。
「私の手首はバックスイングが始まってすぐコックを開始し、約60cmを過ぎる頃にはフル・コックの状態になる。ボブ・トスキやジム・フリックなど進歩派のティーチング・プロも早めのコックを推奨している。これの利点は、トップで色んな作業をやらずに済むということ。最終段階でコックすると、クラブがハネ返ったり、スイング・プレーンを壊したりする。ダウンスイングの初期の動きは問題を孕みやすいのだが、それをスイングの最初でやりおおせてしまうのがミソ」
上の写真を見ると、Ben Hoganも両手が胸の高さに達するまでにはコックを終えています。御多分に漏れず私もレイト・コックだったので早めのコックを試してみたのですが、付け焼き刃なので間違ったコックをし易く、ボール軌道が左右にブレてしまいます。スウィング変更には猛練習が必要です。
(December 01, 2025)
●マレット vs. ブレード
GDOゴルフニュースに「マレット型 VS ブレード型パター PGAツアー優勝者の使用はどっちが多い?」という記事が掲載されました。【https://news.golfdigest.co.jp/news/pgatorgnl/pga/article/186550/1】
それによれば、「2025年のPGAツァー47人の優勝者のうち、驚くべきことに35人がマレット型パターで優勝し、ブレード型(ピン型)パターで勝ったのは12人のみだった」そうです。
(December 01, 2025)
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