August 20, 2025

カウント・ヨギのパーフェクト・ゴルフ

 

[Yogi's swing]

もちろん、カウント・ヨギとはニックネームであり本名ではありません。しかし、ゴルフの世界ではカウント・ヨギとして有名です。

Count Yogi(カウント・ヨギ、1915~1990)はモンタナ州の農家の家に生まれました。間もなく一家はシカゴ近郊に移住し、父は農場を経営しました。彼は幼くして隣接するゴルフ場で遊び、やがて少年キャディとして働きながらゴルフを覚えました。12歳にして60台で廻れるようになり、14歳でプロ入り。1930年代と40年代、彼はシカゴ随一のゴルファーとなり、いくつかのインドア練習場経営とコーチ業で成功しました。しかし、なぜかPGAツァーから疎まれ、全国規模の大会に参加することは叶いませんでした。

カウント・ヨギは妻子と共にロサンジェルスに移りました。彼はBob Hope(ボブ・ホープ)、Dean Martin(ディーン・マーティン)、Mickey Rooney(ミッキィ・ルーニィ)、Howard Hughs(ハワード・ヒューズ)、アイゼンハワー大統領などをコーチしました。Yogi(ヨギ)というニックネームは、有名なジャズ作曲家Hoagy Carmicheal(ホーギィ・カーマイケル)がつけたもので、Yoga(ヨガ)の行者になぞらえたものでした。Count(カウント)は伯爵という意味ですが、ジャズのCount Basie(カウント・ベイシー)のように勝手に名乗ったようです。彼のレッスンは15分以上かかりませんでした。それほど、シンプルなメソッドだったのです。

彼は55回のホールインワンを達成していますが、そのうち二つは1934年のシカゴ・オープンでのパー3と続くパー4とで連続達成したものでした。三つのオープン大会で50台を記録し、ある日のラウンドは57分で18ホール廻り、69というスコアでした。

彼の身長は1.75メートルで中肉中背、腕も脚も細かったのですが、一時は435ヤード飛ばしました。彼は全米各地でトリック・ショットのショーを開催し、それは計7,000回に達したそうです。

[5 Steps]

’The Secret of Golf’
edited by George Peper (Arran House Press, 2005, $18.95)

彼が1973年に出版した'Five Simple Steps to Perfect Golf'という本(右図)は現在100~200ドルもするので、とても手が出ません。で、上記の本に採録された抜粋をお伝えすることにします。

「昨今のゴルフはパワーの追求によって毒されている。『いいゴルフ・スウィングとは何か?』と云えばリズム滑らかさだ。リラックスし、優雅であれそうすればリズムが良くなる。クラブヘッド・スピードも上がる。自動的に飛距離が伸び、さらに大事なことには正確度も上がる筋肉隆々の身体や強靭な手・手首・腕・肩やスポーツマンの両脚など必要ない。LPGAプロを見よ。彼らは身長体重は男性に劣るのに、ボールを遠くへ真っ直ぐに飛ばすではないか。

私が50年以上実行しているスウィングは次のようなものだ。インサイドにバックスウィングし、ストレートにボールを打ち上げる。このメソッドは、
・どんな状況でも変わらない。
・どのクラブでも変わらない。
・どんなライでも変わらない。
・どんな地面の傾斜でも変わらない。
・どんな芝、ラフ、砂、アスファルトやコンクリートの性質によっても変わらない。

私は常にボールを打ち上げるスウィング弧の構えでアドレスする。両手は常にボールの後ろで動く(どんなショットでもハンド・ファーストにはしない)。【註1】クラブフェースをオープンにしたりクローズにしたりしない。パンチ・ショットもしない。長い距離でも短い距離でも常に同じスウィングをする。私は20,000人のゴルファーにレッスンを与えたが、誰もが数回で会得した。あなたにも出来る筈だ。 【註1】本に添付の写真では上図のようにボールは左足の前方で、ハンドルをズボンのファスナーの前方で構えたアドレスをしています。

・スタンスは肩の幅ではなく、土踏まずから膝までの長さでゆったりと立つ。【註:この長さは肩幅よりは広いですが、実写では彼はアニメのようにかなり広いスタンスをしています】
・ボールの上でゆったりと頭を下げるが、左肩の通り道を塞がないよう顎を上げる。
・クラブヘッドを低くしかも楽な感じでどこまでも真っ直ぐインサイド気味に引く。このスウィング弧は常に同じであるべきだ。手を捻ったり手首をクローズにしたりしない。パワフルにではなく優雅に打とうとしているのだということを忘れてはいけない。
・テイクアウェイで左膝はボール方向に下降し、右膝は折れる。
・左肩が顎の下になり身体が捻れる。
・両足は平らに地面に接したまま。
・バックスウィングで上げた軌道を逆コースで振り下ろすダウンスウィング。
・右爪先で地面を蹴り、左足を廻しながら体重を左足にかけた高くゆったりとした姿勢で、肩の上で両手が首に絡まるフィニッシュをする。左膝は終始リラックスしたまま。

[Yogi]

 

上の方法で私はいつもストレートなボールを打てた。私は本や雑誌、新聞に現れるゴルフ・インストラクションをほとんど無視した。私はシンプルでリラックスした優雅で滑らかなスウィングをし続けたのだ」

(August 20, 2025)

自分の能力の範囲内でベストを尽くせ

 

[tee ground]

われわれがドライヴァーを手にすると、「フェウェイを逸れなければどこでもいい。とにかく今日一番、いや生涯一番の距離に飛んでほしい」と願ってしまいます。要するに、ティー・ショットで(無限遠)の距離を望むわけです。これは万病の因です。オーヴァー・スウィング、過度に急速なダウンスウィング、手打ち、固い手首、ヘッドアップ…これら様々な禍々(まがまが)しい症状が待っています。

そうではなく、「おれの平均飛距離は200ヤードだから、このホールだとあの辺、出来れば安全なフェアウェイ左側に打とう」などと計画し、200ヤードぴたり打てれば大成功…と考えるべきなのです。(無限遠)を目標にすべきではありません。

自分の平均飛距離を打とうとすれば、それは博打(ばくち)でも無茶でもないわけですから、身体がリラックスします。リラックスしたスウィングの結果ひょっとすると210ヤード飛ぶかも知れません。いずれにしても、自分の限界を越えないショットをすることがボールをA地点に運ぶことであり、次のショットで問題なくボールをB地点に運べる結果となるでしょう。将棋と同じように駒の役割は決まっており、それを逸脱は出来ません。角や金に飛車の動きを望んではいけないのです。一手・一手、駒(クラブ)に備わった役割(飛距離)を全うさせるべきです、(無限遠)ではなく。

(Aug 20, 2025)

テイクアウェイで腰を動かすな

 

[address]

LPGAツァーほかで計49勝しゴルフ名誉の殿堂入りしているJoAnne Carner(ジョアン・カーナー、1939~)のtip。

'100 Classic Golf Tips'【LPGA version】
edited by Christopher Obetz (Universe Publishing, 2008, $24.95)

「私にとってのスウィングの最大の重要な要素を一つ挙げるとすれば、それはテイクアウェイである。これは何年もかかって発見したもので、手・腕・肩が同時に関連する。腰は、一言で云えば、死んでいる。

私は少なくとも30センチは手を動かすようにしており、その後で腰が自然に動き始める。もし腕のスウィングが正しく行われれば、腰は自然について来る。私は腰のことを考えたりもしない。

このテイクアウェイはスムーズなバックスウィングと充分な肩の回転を達成させてくれる」


(Aug 20, 2025)



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