September 10, 2024
●トップの間(ま)で飛ばす
数ヶ月前のある日のNo.1(320ヤード)パー4で、残り118ヤード地点まで飛んだショットが忘れられません。インストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン、写真)のYoutubeヴィデオを見た翌日でした。【参考:https://www.youtube.com/watch?v=lROE1r9S9D4】
'Effortless Power: How to Increase Your Golf Swing Speed'(エフォートレス・スウィング:スウィング・スピードを増す方法)と題されたこのヴィデオは、アマチュア男性をゲストに迎えてのセッション。ハンデ11のアマチュアのドライヴァーの飛距離はラン込みで240ヤードほどだそうです。ローンチ・モニターでスウィング速度を計測すると、このゴルファーのスウィング速度は平均93mph(41m/s)でした。Paul Wilsonが手首を柔らかくイーズィにスウィングして97mph(43.4m/s)。
Paul Wilsonは「スウィング速度を早めるコツは、下半身を完全にターゲットに向けながらダウンスウィングすることだ」と云って、やはりイーズィではあるものの下半身を素早くターゲットに向けるダウンスウィングをしました。スウィング速度はなんと115mph(51.4m/s)まで上がりました。
翌日、私は上のPaul Wilsonの云う通りやってみました。力まず、トップから下半身をターゲットに向けたイーズィなスウィング。ボールは、いくら探しても私のいつもの範囲には見当たりません。信じられないことに、この日のティー・ショットは残り118ヤードという私にとって前代未聞の位置まで飛んでいたのです。このホールの私の普段のティー・ショットは残り170ヤード付近ですから、突如50ヤード以上も飛距離が伸びたのです。10ヤード程度の飛距離増なら「地面が固ければ、たまにはそんなこともある…」と驚きませんが、50ヤードとなると捨ててはおけません。是非、ドライヴァーの毎ショットでそれを実現したいと思いました。
その快打で覚えていることは、次の通りです。
1) 力まなかった(筋肉を硬直させなかった)
2) 大振りしなかった
3) トップで一瞬の間(ま)を置いた
4) 下半身のリードでダウンスウィングした
3と4は、実はセットです。切り返しをバックスング➝ダウンスウィングと切れ目なしに連続で行うと、下半身のリードが完全に行われない恐れがあります。確実に下半身が始動したのを確認してから手・腕を動かすには、トップで一瞬の間(ま)が必要です。「トップの間(ま)」というテーマは、1998年の当サイト開設早々から登場しています。私は間(ま)を置く意義を認めて数年間はそれを実行していたのですが、最近は意識的にはやっていませんでした。
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は「バックスウィングの捻転が終わる前に、下半身は既にダウンスウィング(逆転)を開始しているべきであり、トップの間(ま)などというものはあるべきではない」と云っています。私の仲間でJack Nicklaus風切り返しをする者がいますが、概ね「右や左の旦那様」です。ワンラウンドにつき一回か二回真っ直ぐとてつもなく飛ぶことがあるので、当人はそれが忘れられないのでしょうが、スコア的にはそれは惨めなゴルフとしか云いようがありません。。
一瞬であってもトップで間を置くと、そこでエネルギーが充填されます。「後退」から「前進」へとギア・チェンジする一瞬の間(ま)と云ってもいいでしょう。振り子運動も両端で一瞬停止するように見えるではありませんか。野球のホームランバッターもほぼ静止した状態から球を打ちます。ゴルフも同じであって悪いわけはありません。
上体のダウンスウィングは下半身に引っ張られて始まるべきなので、重要なのは下半身の動きです。トップで間を置くと、下半身が素早く確実に逆転出来ます。私は、今後のスウィングは「トップの間」を絶対遵守すべきだと決意したのでした。
【参考】
・「Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)のトップの間(ま)」(tips_133.html)
・「万病に効く「トップの間(ま)」(tips_161.html)
(September 10, 2024)
●トップの間(ま)・視覚化法
これはインストラクターSteve Bosdosh(スティーヴ・ボスドッシュ)のtip。
'The Best Instruction Book Ever!'
by Golf Magazine's Top 100 Teachers (Time Home Entertainment Inc., 2012, $29.95)
「アドレスする際こう考えてほしい。あなたのクラブシャフトには半分だけ水が入っているのだ…と。あなたがスウィングを開始する前、すべての水はシャフトの下半分に溜まっている。だが、スウィングがトップに近づくにつれ、引力がその水をハンドル付近へと移動させる。
ボールに向かって急いで振り下ろすのではなく、ダウンスウィングの前にシャフトの中の液体が完全にグリップエンドに溜まるまで待つ。
その僅かな間(ま)が、ボールに向かって急激な突進をすることを防止し、全体としてスムーズな動きを実現する。さらに、このトップの間(ま)は手の動きでスウィングを開始するのではなく、腰→肩→手+クラブヘッド…という順序による下半身主導のダウンスウィングを励行させてくれるのだ」
(September 10, 2024)
●リズムとテンポの研究【5. テンポを確立する】
英国人のインストラクター、ジョン・ジェイコブズが面白いことを云っています。「もし、ベン・ホーガンに遅いスイングをさせ、サム・スニードに早いスイングをさせていたら、彼らは歴史に残るゴルファーにはなれず、スニードは農夫に、ホーガンはプロのギャンブラーになっていただろう。一般的に早いスイングをする人は背が低く、遅めのスイングをする人は背が高い。重心の違いによるものではないかと考えられる。しかし、ゴルフ・スイングに公式というものはない。色々なスピードを試してみるのが一番である」
スタンリー・L・シャピロによるテンポ確立法を御紹介します。バランスを保てる範囲内で目一杯の速さでボールを打てるスピードを100%とし、その80%、75%、50%の各スピードでボールを打ってみる。大抵のゴルファーは75~80%によるショットがベストであるという結論に達するが、そのスピードは実はそのゴルファーが普通に歩く早さと一致するのだそうです。
もう一点、スタンリー・L・シャピロが力説するのは、《どのクラブでも同じテンポで振る》ということ。「アニカ・ソレンスタムのスイングの偉大なところは、どのクラブでも同じテンポで振るということだ。彼女がどのクラブを振っているのか、見ただけでは判らない」9番アイアンのような短いクラブを振るのと、シャフトの長いドライバーを振る所要時間が同じということは、9番アイアンは比較的ゆっくり、ドライバーは比較的速めに振るということにほかなりません。
同じことをジャック・ニクラスは'Jack Nicklaus's Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)なる本で次のように述べています。「ある時、私の7番アイアンと2番アイアンのショットを、超スロー・モーションで撮影して貰う機会を得た。そのフィルムを見た私は大いに喜んだ。双方のスイング所要時間がぴったり同じだったからだ。それは、私の生涯の目標の一つだった」
参考のため、プロたちのスイングを分析してみました。ビデオをデジタル・キャムコーダーにコピーし、ビデオ編集ソフトでバック・スイング開始からトップまでと、トップからインパクトまでの齣数を計算したのですが、両方の比率がリズムに相当します。全体の齣数の合計はテンポ(スイングの速度)の目安と云えるでしょう。なお、フォロースルーはどこが本当の終りなのか確定出来ないので省略しました。
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
アーニー・エルス (1995) | |||
フレッド・カプルズ (1988) |
アーニー・エルスとフレッド・カプルズはほとんど同じです。二人が揃ってイージーでエフォートレスなスイングの代表と云われるのも当然ですね。彼らの先輩で、流麗なスイングの見本と云われるサム・スニードのスイングを見てみましょう。
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
サム・スニード(年代不詳) |
素材とした映像は白黒フィルム時代のものですから、彼の最盛期のスイングと思って間違いありません。奇しくもフレッド・カプルズと同一リズム・同一テンポです。では、速いスイングの代表ベン・ホーガンはどうでしょう?
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
ベン・ホーガン (1965) |
リズム(比率)はエルスとカプルズの中間ですが、テンポがベラボーに速い。バック・スイングもダウン・スイングも電光石火の速さと云えます。デビッド・レッドベターは次のようなホーガンの言葉を紹介しています。「しっかりしたスイングの持ち主には、いいテンポが自然に備わるものだ。テンポについて考える必要はない」レッドベターは、いいテンポを構築する方法として、目をつぶって素振りすることを勧めます。身体の各部の動きを忘れ、テンポだけに集中出来る方法というわけです。さて、もっと若手(?)で速い方の筆頭に挙げられるニック・プライスはどうか?
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
ニック・プライス (1994) |
まるでベン・ホーガンのクローンのようにリズムもテンポもそっくり同じ。この1994年というのはニック・プライスが全英オープンで優勝した年です。では、プロの真打ちとしてタイガーに登場して貰いましょう。
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
タイガー・ウッズ (1997) | | ||
タイガー・ウッズ (2000) | | ||
タイガー・ウッズ (2004) | |
1997年はタイガーがマスターズ初優勝を飾った年。2000年は全英、全米、PGA選手権の三つを制覇した年。昔の方が今よりテンポが速いだろうと推測していましたが、実は逆でした。年々速くなっているようです。ニック・プライスより遅いのにタイガーの方が飛ぶわけですが、多分身長、身体の柔軟性など諸条件の違いによるものでしょうね。
ジョー・ダンテが云う「バック・スイングはダウン・スイングの長さの二倍」(2:1)という説に当てはまるプロは一人もいません。以上6人の平均的リズムは2.4:1です。
スイング篇の最後に名著'On Learning Golf'(ゴルフの習得について)の著者パーシー・ブーマーの言葉を引用しておきます。
「加速のクライマックスはボールを1ヤード(約90cm)ほど過ぎた位置でなければならない。そのためにはバック・スイングを短くする。ボール通過後までパワーを残しておくには、短いバック・スイングしかないからだ。
いいプレイヤーは、フォロースルーの程度から逆算してバック・スイングの長さを決める。彼はどこまでテイクアウェイするかを意識しているわけではないが、ボールを通過した後が加速の絶頂であることを知っている。つまり、ボールはスイングの真の中心ではないということだ」
(September 10, 2024)
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