August 10, 2024
●パットの距離はバックストロークの長さで制御せよ
これはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)がいろいろな雑誌に書いたパットのコツを集成した本からのtip。
'Putting My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $25.95)
「ゴルフをすればするほど実感することがある。それはパットする距離をコントロールするのは、打つ強さでなくバックストロークの長さだ…ということだ。それは、ロング・パットには長いバックストロークということを意味する。
この信念を築いた主な理由の一つは、私がベストのパッティングをしていた頃、直面したどのパットにおいても力でボールをカップに届けるのではなく、パターがそれ自身のテンポで動いていることに気づいたからだ。
【編註】「パターがそれ自身のテンポで動く」というのは振り子の運動を想起させます。
距離が長くなれば打つ強さをそれ相応に加えなくてはならないが、それでもなお、原則的に適切な幅のバックストロークの結果として、可能な限りパターヘッドが自由にそして自然にスウィングしてほしいと願っていた。
私は練習によってでなく、実際のトーナメントにおいて学んだのだ。すなわち、短いバックスウィングでパターフェースの角度をずらすことなく必要な距離を力で制御することは物凄く困難である…ということを。
これが、アマチュアが短いパットをミスする主な原因ではないかと考える」
(August 10, 2024)
●右肘でパットすべし
”奇跡のコーチ”と呼ばれたインストラクターPhil Galvano(フィル・ガルヴァノ)のパッティング・ストローク。「オーヴァースピンでパットせよ」の続編です。
'Secrets of Accurate Putting and Chipping''
by by Phil Galvano (Prentice-Hall, 1957)
「ストロークは手首ではなく、両腕で行われる。何故手首ではないのかって?
鉛筆で直線を描く実験をしよう。先ず、前腕を動かさず、指と手首だけでやってみてほしい。これだと数センチしか直線を描けないはずだ。では、手首を使わず腕だけでトライしてみる。なんら困難を感じることなく何十センチでも直線が描けることだろう。パッティングも手首ではなく腕を使うべきなのだ。
右肘はストロークの間じゅう身体の近くに留まり、バックストロークの際身体の右脇を擦る。
もしバックストロークを指と手首で始めると、緊張によってインパクトの際、急角度でクラブフェースをクローズにし、その結果ボールを左に向かわせてしまう。
腕を使うストロークだけが、ストロークの最初から最後までクラブフェースをスクウェアに保つことを可能にする。
重要なのはストロークのエネルギーは右肘で生じるということだ。右肘でバックストロークする。ストロークのパワーは、ストロークの長さによるのであって、打つ強弱ではない。
Phil Galvanoのパッティングは、上の写真のように左肘をターゲット方向に突き出すスタイルです。私はパターのスウィートスポットでボールを打つためには、左肘を伸ばした方がいいと思っていますが、両肘を曲げてパットするツァー・プロは少なくないですね。
「ストロークのエネルギーは右肘」という理論は正しいと思います。右肘がエンジン(動力源)であって、左肘はパターをカップに向かわせる舵だと考えるべきです。左腕を真っ直ぐ伸ばすスタイルの私の場合は、左手甲が舵取りをします。
私は「三角形パッティングのコツ」(tips_211.html)という記事で「右肘は伸ばさず、チキンウィングのように曲げるべきだ」と書きました。それは右肘を曲げてリラックスさせたままにすることが三角形を保つ助けとなるという趣旨で、ストロークのエンジンとまでは考えませんでした。右肘をエンジンとすれば三角形も保て、手首に力を篭める必要もなくなり、手首を捻って狙いを外すこともなくなるので一石三鳥です。
Phil Galvanoが「右肘はストロークの間じゅう身体の近くに留まる」と主張するのは、彼のストローク・メソッドが「バックストローク:10センチ、フォワード・ストローク:30センチ」というものだからなのです。バックストロークをたった10センチだと、パチンと打たないと距離コントロールは不可能です。彼が説く「ストロークのパワーは、ストロークの長さによるのであって、打つ強弱ではない」と矛盾しているように思えるので正規の紹介は控えた次第です。
【参考】「オーヴァースピンでパットせよ」(tips_211.html)
(August 10, 2024)
●リズムとテンポの研究【2. リズムの発見】
先ず、流麗なスイングで知られていたサム・スニード。彼は自著『ゴルフは音楽だ』の中で次のように述べています。「フィギュア・スケートを見たことがあるだろうか?音楽が変ると、スケーターは直ちにビートに乗る。私もラウド・スピーカーで音楽を鳴らしながらゴルフが出来たらいいと思う。そこにリズムとタイミングが関わって来る。『ワン・ツー・スリー』…と。私のスイングはスローに振り上げ、ダウンもスローにスタートする。次第にスピードを増し、インパクトでパン!と爆発する。あなたに必要なのはゆっくりした何か、ワルツのようなものだ」
サム・スニードは三拍子の“ワルツ派”であることが分ります。イギリスの高名なインストラクターであるジョン・ジェイコブズは、彼の本'50 Greatest Golf Lessons of the Century'(20世紀の偉大なゴルフ・レッスン50講)で、サム・スニードのリズムについてこう云っています。「サム・スニードの素晴らしいリズムの中心には二つの基本がある。小鳥を苦しめない程度に両手で包むようなソフトなグリップと、ドライバーでさえ80%の力で打つという制御されたスイングである。大方のゴルファーはきつ過ぎるグリップをし、バッグからドライバーを抜く度に猛牛のように荒々しくなる。サム・スニードのようにソフトなグリップが自然なリズムを生みだし、あなたの動きに流れるような感覚をもたらすのだということを忘れてはいけない」
トム・ワトソンはこう云っています。「ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中に「エーデルワイス」という曲がある。この曲名をエー・デル・ワイスと三つに分け「エー」でバックスイングの途中まで行き、「デル」でトップ、最後の「ワイス」でインパクトに向かうという方法がある。これはなかなかいい」彼も“ワルツ派”のようです。トム・ワトソンは早めのスイングで知られています。つまり、同じワルツでも彼のように早いテンポと、サム・スニードのように遅いテンポがあり得るということが分ります。
アーニー・エルスは彼のビデオ'How to Build a Classic Golf Swing'( アーニー・エルスの模範ゴルフスウィング)(PolyGram Video, 56 min., 1995)において、“ワルツ派”(三拍子)と“マーチ派”(二拍子)それぞれの例をデモして見せてくれます。
アーニー・エルスのリズム論:「せっかちの人は普段歩くのも話すのも早い。こういう人は1でバック・スイング、ヒッティング・エリアで2が相応しい。ゆっくり歩き、ゆっくり喋る人は1でバックスイング開始、2でトップ、ヒッティング・エリアで3というリズム」
彼が打つと、二拍子でも三拍子でもいいショットになるようですが、彼自身は“ワルツ派”だそうです。
『 インナーテニス/こころで打つ』がベストセラーになったW. ティモシー・ガルウェイ(スポーツとビジネスのアドバイザー)は『新 インナーゴルフ』という本で次のようなエピソードを紹介しています。
「他人のリズムを真似してはいけない。たった二、三球いいショットが出たからといって、それを自分のリズムと決めつけてはならない。あなた固有のリズムはあなたの身体の中で脈打っている拍子であり、それを見つけるべきだ。
私のところへ、ハリエットという名の若い女性がゴルフを習いに来た。彼女のスイングの各部は基本通りだったが、いい結果が出せなかった。彼女はトップで車のギア・チェンジをするかのようにスイングを停止し、それからダウン・スイングに移っていたからだ。私は彼女に『ダンスをするように振ってみなさい。当面、結果は無視するように。あなたにとって心地よいリズムを作り出すことが先決』と示唆した。5分もかからずに、彼女のスイングは見違えるように良くなり、本当のスイングと呼べるものに変貌した。ハリエットはパワーと正確さを身につけただけでなく、ボールを打つ動作に喜びさえ見い出したのだ」
ところで、W. ティモシー・ガルウェイは“マーチ派”なのです。彼はゴルフ・スイングはテニスと同じで、バック・ストロークとフォワード・ストロークの二拍子であると主張します。「二拍子は呼吸のリズムを初めとする大概の動きの基本である。それはすでに備わっているものなので、強制する必要はない」と説きます。
なお、リズムとテンポに関連して「タイミング」という言葉が聞かれることがあります。足、膝、腰、肩、腕などがスムーズに連動すると「タイミングが取れている」と称されます。いいリズムとテンポが確立されれば、タイミングは自ずと備わって来るものと解釈しましょう。
(August 10, 2024)
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