May 10, 2023

チッピングをマスターする

 

アメリカの'Golf Magazine'誌が過去に出版したショートゲームの本からチッピングの骨子を抜き出してみました。

'The Golf Magazine: Short Game Handbook'
by Peter Morrice and the editors of Golf Magazine (The Lyons Press, 2000, $14.95)

・チッピングとは

飛行部分が全行程の1/3を越えず、残り2/3(あるいはそれ以上)はランとなるショットがチッピングである。グリーン外の芝の上からボールをガツン!と弾いてグリーンに着地させ、そこからピンまで転がす。これはパッティングを除けば最も単純な動作であり、単純な動作であればあるほどミスを犯す危険が少ないショットと云える。

宙を飛ぶボールは着地して予想外の方向に跳ねたりするが、転がるボールにはその可能性は少なく、どう進むか予想し易い。

パッティングは最も安全であるが、グリーン外からパットするにはライがよく、全行程の地面ががスムーズでなければならない。そうでなければチッピングの出番だ。

肝に銘じておくべきことは、危険を最小にすることである。

・チッピングすべきでない場合

ピンとの間に深いラフや砂地がある時、砲台グリーンに打ち上げる時、草がボールとの接触を邪魔している時…など。

・チッピングの準備

ボールからカップまで歩いて、ボールの着地点、グリーンの傾斜、転がす予定の最終段階などを調べる。そしてショットとボールの進行を心の中で思い描く。

着地点はグリーンエッジから少なくとも1メートルのグリーン上であるべきだ。これなら多少強く打っても弱く打っても許容範囲である。

・クラブ選択

二つの流儀がある。一本のクラブの異なる幅のスウィングで距離を打ち分ける一派と、多数のクラブ(SWから5番アイアンまで)を用いる一派である。どちらも一理あるが、後者の方が単純と云える。

・チッピングの前提

何より大事なのは正確さと筋肉の弛緩である。距離が短いほど大きな筋肉を使う必要はなく、リズムとタイミングに頼ることが出来る。緊張はリズムの大敵なのだ。選択したクラブに納得し、心の目でボールの進行をイメージする。似たようなライで数回素振りした後、ラインを一瞥したらボールを打つ。《(心眼で)見る→納得する→打つ》という順序で遅滞なく遂行すれば、緊張が忍び込む隙きが無い。

 

・チッピングの基本

チッピングの基本はクラブが下降するヒッティングであり、スウィング弧の最低点が地面に達する前にボールと接触する。この下降しつつボールを打つ様(さま)を、ボールをクラブフェースと地面とで締め付ける動作と考えればよい。

ボールとクラブフェースのクリーンな接触が重要である。草が挟まるとクラブヘッドの勢いを殺し、スピンの効果を予測出来ないものにする。草の影響が小さいものであっても、短い距離のショットにとっては致命的影響となり得る。

・チッピングのボール位置

ボールを右足甲の前に置き、両手を左太股に達するまで傾ける(ハンド・ファースト)。これは急角度のバックスウィングとインパクト・ゾーンで下降するクラブヘッドの動きを準備する。

・体重

アドレスで60〜70%の体重を左足にかける。これはボールへと下降する角度を助けるだけでなく、体重移動の動きを封じる。左足にかけた体重はそこに留まるべきであり、体重移動はチッピングには不必要なものだ。

・スタンス

両踵の間を15〜20センチ離し、体重移動無しでスウィングする。このスタンスは体重移動する誘惑に抗し、アップライトなスウィングをお膳立てし、手・腕が身体に近い位置で動くようにコントロールする。

・クラブを短く持て

両手をスライドさせ、右手がほぼハンドルの端に達するように握る。このようにクラブを短くするとスウィングのパワーを減じ、コントロールを強化する。

・オープン・スタンス?

スクウェア・スタンスはインパクト・ゾーンでのクラブヘッドの軌道をストレートに保つ点で理に適っている。しかし、いい視野が得られるというのでオープン・スタンスを好む人々もいる。快適な方を選択すべきだが、もしオープン・スタンスでチップ・ショットの結果が逸れるようならスクウェア・スタンスを用いるべきである。

・スクウェアなクラブフェース

ボール位置をスタンス後方にするとクラブフェースがオープンになりがちである。これはスウィングの最中に微調整でもしない限りインパクトまで続き、ボールをターゲット・ラインの右に打ってしまう。

これに抗するには、ボール位置に無関係に常にクラブのリーディング・エッジをターゲット・ラインに垂直にしておくべきだ。

・スウィング

『ワンピース・テイクアウェイ』という言葉を聞いたことがあると思う。フル・スウィングをスタートさせる時、両手・肩・クラブを一体として同期させて動かすというものだ。チッピングには、これはスタート時点だけでなくスウィング全体に必要なことだ。両腕と両肩で形成される大きな三角形を終始保ちながらスウィングせよ。【上の写真参照】 手・手首・前腕などの小さい筋肉はゴルフ・スウィングにおいて最も信頼出来ないものなので、それらに動きをリードさせるべきではない。

体重を左足に固定したまま頭も静止させ、手・腕・肩で出来る三角形を崩さず振り子のように動かす(パットのような感じである)。胴体は不動のまま留まる。

・リラックスせよ

手と腕の緊張、あるいはアドレス時の身体の緊張は、間違いなく急速なスタートに繋がり、取り返しがつかないミスだ。緊張を防ぎスムーズな最初の一歩を始めるには、アドレスで目をターゲット・ラインに注ぎながら、クラブヘッドを浮かして前後にワッグルすることだ。

・身体のリアクション

チッピングする間、手首は意識的にコックすべきではないが、クラブが振られる動きに自然に反応して動くのは許される。これはグリップをゆるく保っている場合に自動的に起こることだ。

下半身に関しても、リラックスし反応する感じを抱くべきだ。膝と腰はバックスウィングにつれてスウィング動作への反応として僅かに後方に回転すべきだ。

・ダウンスウィング

ダウンスウィングはバックスウィングの鏡像であるべきだ。単純に腕と肩で出来る三角形をターゲットに向けて戻せばよい。インパクト・ゾーンでクラブヘッドが自然に加速するのに任せて…。

・フィニッシュ

クラブヘッドをバックスウィングの幅に対応する長さで振り抜く。手首を返してはならないし、肩の回転を止めてもいけない。フィニッシュでのクラブヘッドは向こう脛の高さで、上体はターゲット方向に半分向いているべきだ。

 

(May 10, 2023)

予告

 

次回は「ピッチングをマスターする」を二回にわたって掲載し、さらにその後チッピングとピッチングのテクニック対照表も付け加える予定です。

(May 10, 2023)



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