January 10, 2023

新・頭の研究

 

「飛ばそう!」と思うと頭も上体も何もかもがターゲット方向にスライドしちゃうことがあります。これは重症の場合極めて恥ずかしいポップアップ、軽症で醜いプルの原因となるので絶対に避けたい動きです。

[Nicklaus]

《頭を右膝の上に置いてダウンスウィングする》にこだわってみたらどうかと思いました。それを実践したラウンドのNo.3(227ヤード、パー3)で打った9番アイアンの第二打はピンに1.5メートルにつき、うまくパットしてバーディ。No.6(396ヤード、パー5)で打ったハイブリッド24°による第三打はピンの向こう1.5メートルについて、これもいいパットが出来てバーディ。

ただし、この方法はフックになる弊害も出ました。考えてみるとダウンスウィングで右膝は左へ動くわけですから、右膝と共に頭も左へスライドしてしまう恐れがあるわけです。上の例が真っ直ぐ飛んでバーディを射止められたのは単なる偶然に過ぎなかったようです。

頭を動かさず身体をスライドさせない良いコツはないかと探し求めました。

・Jack Nicklaus(ジャック・二クラス、写真右)
'Golf My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Simon & Schuster, 1974, $14.00)

「頭を静止し続けるというのは、ゴルフ習得の中でも最も難しいものだ。私のコーチJack Grout(ジャック・グラウト、写真左の白ズボン)は、私がボールを打つ間、彼のアシスタントに私の髪の毛を掴ませた。これを思い出すと、今でも頭の皮がチリチリする。痛くて何度も涙が出た。私が15歳になる迄に、私は頭を一箇所に保持する術(すべ)を習得した」

残念ながら、私には髪の毛を掴んでくれる人間はいません。

[Palmer]

・Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)
'My Game and Yours'
by Arnold Palmer (Simon and Schuster, 1963)

「簡単に頭を静止させられるなら、100を切ろうとして四苦八苦するゴルファーはいないだろう。誰もが70台か、80台前半で廻れる筈だ。まるでゴルフ天国。ここで私が読者に《頭を動かさずに済む10の法則》てなtipを提示出来たら、どんなにいいことだろう。しかし、出来ない。私は先ず正しいグリップを身につけるために苦闘し、次いで足の問題に取り組んで解決し、最後に頭の問題に集中して数年を費やした。練習場でもコースでも、ボールを打つ際、常に頭のことを考えた。そして、私は頭を静止させる決意をし、ショットに失敗したらこの次はちゃんとやろうと自分に云い聞かせるようにしている。頭の問題は集中心の問題と云える。一旦動かさないと決意したら、後は実践あるのみである」

・スポーツ心理学者Dr. Tom Dorsel(トム・ドーセル博士)

ドーセル博士は、ある18ホールのラウンドの間クラブヘッドがボールを通過する様(さま)を見ることに専念し、自己記録を塗り替えてハンデを二つ減らすことが出来たそうです(8→6)。

「クラブヘッドがボールを通過する様(さま)を見る」ということは「ボールの残像を見る」と同じです。私は長いこと「ボールの残像を見る」ことが頭を動かさないコツであると信じていました。しかし、これは間違いでした。残像を見るのは実は頭を動かしても出来ることなのです。試してみて下さい。頭を1メートル横に動かし続けながらだって、ボールから眼を逸らしていないと云えるのです。

[Morrison]

つまり、ボールをじっと見るってことは頭を動かさないこととは無関係なのです。もっと確実な方法が必要です。

・インストラクターAlex Morrison(アレックス・モリスン、1896~1986、写真)

Alex Morrisonは1930年代に絶大な人気を誇っていたコーチで、彼が教えた名人たちにはWalter Hagen(ウォルター・ヘイゲン)、Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Sam Snead(サム・スニード)、Ben Hogan(ベン・ホーガン)など錚々たる人々がいました。彼は次のように云っています。

'A New Way to Better Golf'
by Alex J. Morrison (Simon & Schuster, 1932)

「身体の他の部分の動きから独立させた顎をボールの後部の一点に向け、ボールが打たれたかなり後までそのまま向け続けよ。どんなスウィング・メソッドを採用していようが、上のようにしない限り、ショットに成功することは不可能。私は『頭を下げ続けろ』とか、『ボールから目を離すな』なんてことを云っているのではない。文字通り、身体のアクションから独立させた顎をボールの後ろに据え、ボールが打たれた後までそこに向けたままにするのだ。これは正しいスウィングにとって最重要の動作である」

[Lydia]

顎をボールの後ろ(右側)に向けたままスウィングするというのは、慣れないことなので最初はまごつきます。しかし、これは素晴らしいtipです。飛距離が伸びるわけではありませんが、ドライヴァーからフェアウェイウッド、ハイブリッドまで、驚くほどボールを真っ直ぐ飛ばせるようになります。

以前、「パー3に乗せるコツ」として「インサイド→スクウェアのスウィングで、左肩がターゲットを指すフィニッシュ」という方法を紹介しましたが、当時なぜそれが効果があるのか理由は不明でした。この度、顎をボール位置に残すスウィングを試みているうちに、その謎が解けました。顎をボール位置に残してスウィングすると左肩がターゲットを指すインパクトにならざるを得ないのです。左肩がターゲットを指すインパクトを迎えると頭が動かずに残るのです。これら二つは実は同じことだったのです。頭(=顎)を動かさないことが真っ直ぐにボールを打つ秘訣なのでした。

ただし、頭を残していても手打ちでは駄目です。左膝・左腰がリードするダウンスウィングを行わない限りいいショットにはなりません。

私が参考にしたいのはLPGAのLydia Ko(リディア・コゥ、写真)のスウィングです。スムーズで、力んだところがなく、下半身主導のダウンスウィングをしていて、頭も立派に残しています。完璧です。

スローモーション・ヴィデオで彼女のスウィングを見ると、バックスウィングで左手が地面と平行になる辺りから左肩に押されるように顔が後方(右)を向き始めます。Lorena Ochoa(ロレナ・オチョア)はダウンスウィングで頭を右に向けるのですが、Lydia Koはバックスウィングです。私の場合だとダウンスウィングで左肩がターゲット方向に逆転するにつれ、顔も左を向き始めてしまうところですが、彼女はダウンスウィングoぐいっと顎を引いて頭を不動にしています。これが頭を動かさない秘訣のようです。

【参照】https://www.youtube.com/embed/3wLk27z0Yvk 【Lydia Koのドライヴァー・ショットの超スローモーション。2:45】

【参考】
・「頭の研究」(tips_49.html)
・「頭を残すドリル」(tips_185.html)

【Jack Nicklausの画像はhttps://www.golftipsmag.com/、Arnold Palmerの画像はhttps://ca-times.brightspotcdn.com/にリンクして表示させて頂いています】


(January 01, 2023)

筋肉の緊張を解き放て

 

[meditation]

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)執筆のメンタルtips集より。

'Golf: The Art of the Mental Game'
by Dr. Joseph Parent (Universe, 2009, $24.95)

「ボールを打つ前の準備として重要なことは、緊張を解くことである。緊張は流動性を阻害するものだからだ。必要なのはよいポスチャーと、スウィングする間クラブをコントロールするための緊張の二つだけに過ぎない。

過剰な緊張を取り除くには身体のどこが緊張しているかを知り、その緊張は朝陽の下のひとひらの雪であるとイメージし、その緊張を認識することによって溶け去るものであると信じることだ。

もしその緊張が身体の特定の場所にしつこく留まろうとするなら、あなたの一回ごとの呼吸がその部分を流れ入ったり流れ出たりして、呼吸が緊張を溶かし去る様(さま)をイメージすることだ。

緊張と深呼吸は相反するものである。緊張している時には深呼吸出来ないし、深呼吸出来れば緊張は溶け去る。どのショットの場合にも深呼吸することをプレショット・ルーティーンに組み入れれば、あなたはボールに近づきスウィングを開始する理想的なトリガー(引き金)を見つけたことになる」

【画像はhttps://golf.com/にリンクして表示させて頂いています】

(January 10, 2023)



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