February 16, 2023
●ヒッコリー・ゴルファー
最近われわれのシニア・グループに加わったTobby Taylor(トビィ・テイラー、67歳)がヒッコリー・シャフトのパターを使っているので驚きました。「変わってるな」というのが第一印象でした。
それは序の口でした。ある日彼はドライヴァーはパーシモン・ヘッド+ヒッコリー・シャフト、アイアンからパターまでヒッコリー・シャフトのセットでプレイしていたのです。変わってるどころじゃありません。聞くと、普段はスティール・シャフトのモダンなクラブでプレイするが、Society of Hickory Golfers(ヒッコリー・ゴルフ愛好家協会)のトーナメントや愛好家同士のラウンドの前にはヒッコリーのクラブで練習するのだそうです。
ヒッコリー・ゴルフ愛好家は、彼の推測では全米で4,500人ぐらいいるそうですが、全世界の愛好家の人数は推定出来ないそうです。ヒッコリー・ゴルフ愛好家協会は毎年全米トーナメントを開催します。それには三種類あって、1) フェザー・ボール(鵞鳥の羽根を詰めた牛革製ボール)を打つトーナメント、2) 1900年以前のクラブとボール(ガッタパーチャ)を用いるトーナメント、3) 1900~1935年のクラブとボールを用いるトーナメント。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のグランドスラムは1930年ですから(3)の時代に該当します。
そしてヒッコリー・シャフトは機械では作らず全部手作りだそうです。フェザー・ボールやガッタパーチャなんてもう博物館にしかない物と思っていたのですが、まだ製造販売している会社があるのだそうです。ガッタパーチャを用いるトーナメントでは、ティーを使わず今でも砂を盛り上げて打つため、砂を掬って押し出す小さな道具を使うそうです。
Tobbyの話:最近の反発力のあるデカヘッド、グラファイト・シャフトは飛距離が稼げるが、ヒッコリー・シャフトはそうはいかない。またヒッコリー・クラブには現在のクラブのような水平のグルーヴ(溝)がないので、ボールが上がりにくい。どうしても転がしを多用することになる。昔のヒッコリー製アイアンにはバウンスもなかった(最近作られているクラブにはバウンスがつけられている)。ヒッコリー・シャフトはスウィングの最中にトルク(ねじれ)を生じる。これを防ぐにはスローなテンポで、スムーズに打つのがコツ。それとソフトなボールを使うのが望ましい。昔はレディース用しかなかったが、最近はボールメーカーが競ってソフトなボールを作っているので、選ぶのに苦労しない。
前述のようなトーナメントに参加する男性には昔ながらの「プラス4」と呼ばれるニッカボッカより4インチ長いズボンの着用が奨励されていますが、普通のズボンを履く人もいるそうです。
Tobbyのゴルフ歴は変わっています。20代、彼は空軍のIT技術者(ハード担当)としてフロリダの基地に配属されていました。休みのある日、基地付属のゴルフ・コースの池で魚釣りをしていた時、彼の釣り竿にかかった大物はなんと1番アイアンでした(誰かが腹立ち紛れに投げ込んだのでしょう)。その1番アイアンを上官に見せたところ、その上官がゴルフ好きだったせいで「それでボールを打てるようになれ」と云われた…それがゴルフの始まりだったそうです。
彼に「実際のラウンドで苦心や工夫をデモして見せてくれ」と頼んだら、「2セットあるから、あんたもヒッコリー・クラブでプレイしろ」と云われ、慣れないクラブでしかも練習も無しのぶっつけ本番でラウンドする羽目に…。問題は寄せです。私の60ヤード以内の寄せはロブ・ウェッジ一辺倒なのに、それが使えず7番で転がすか9番で上げるかどちらか。
No.1(パー4)では二打目をバンカーに入れましたがサンドウェッジなんてものはないので、ニブリック(9番アイアンに相当)で出しました。ヒッコリー・シャフトのパターによる長めのパットが入ってパー(奇跡!)。No.2はボギーでしたが、No.3(パー4)で2オン2パットのパー(またもや奇跡!)。Tobbyは私にヒッコリー・クラブでの先輩であるところを見せようとしていた筈ですが、彼はミスを連発し”初心者”の私にオナーを取られっ放しでクサっていました。しかし、私が力んで打ってプッシュしたため、No.5(パー4)とNo.6(パー5)でトリプルを出し、やっと先輩風を吹かせることが出来てほっとした感じ。しかし、私がヒッコリーとパーシモンヘッドという初めてのクラブを結構使いこなしたので驚いていました。私としては、最近の「頭の研究」が役立ったのだと思っています。
日本にもヒッコリー愛好家の組織とトーナメントがあります。関心のある方は御覧下さい。
https://www.facebook.com/groups/japanhickorygolfassociation/
https://hickorygolf.jp/
https://golf-global.jp/vol12-62senior/
(February 16, 2023)
●新・コックの研究
私はこれまでコックについてはほぼ無関心でした。インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)が「コックは自然のままになるだけで十分。意図的にやる必要はない」と云っていたのと、意識的にコックしようとすると手首が凸型になったり凹型になったりするトラブルが多かったからです。
しかし、昨今の飛距離減によってコックの必要性を痛感しました。鏡を見ながら、トップでクラブシャフトを水平にしようとしてみたのですが、なりません。どうやってもならない。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は水平以下に垂れ下がるようなトップでしたが、そんな真似は私には到底出来ません。
以前、手首を鍛える運動として写真のように重い練習用クラブを上げ下げする方法を紹介したことがあります。右手だと90°(地面と水平)に出来ますが、左手では90°まで上がらず、せいぜい85°という感じ。実際のクラブを使っても同じです。
つまり、私の左手首は90°には曲がらないということが判明したのです。ということは、私のトップでのクラブ・シャフトは85°傾斜していれば充分にコックしている状態なので、それ以上きついコックを望むのはインチキを強制することであり、グリップを緩めたり手首を凹型(甲側に折る)に崩壊させたりする以外の何ものでもないということが解ったわけです。
ここでカナダの異才Moe Norman(モゥ・ノーマン、1929~2004)を思い出しました。彼は、世界一正確にボールを打った人ですが、彼のコックはどうだったのか?彼は写真のように両手がやっと肩の高さに届くか届かないかぐらいのトップでドライヴァーを打っていましたが、これは私のトップより低く短い。そして、きついコックをしているようにも見えません。このスウィングで平均265ヤード打っていたそうです(パーシモン・ヘッド+XXシャフト)。スウィング速度と筋力で飛ばしていたのでしょうか?彼は毎日1,000個のボールを打っていたそうですから筋力はあったでしょう。
筋力のない私はコックする他に途はありません。私は自分の身体的条件が許す限りコックしようと決意しました。
「Johnny Miller(ジョニイ・ミラー)の早めのコック」(tips_4.html)という記事を思い出しました。現在の主流はトップに近づいてからのコックですが、早期にコックするプロも少なからず存在します。全米と全英オープン両方に優勝したJohnny Millerもその一人です。目に見えないところ(トップ近辺)で無理にコックしようとするから凸型や凹型になるので、テイクアウェイ直後にコックしてしまえば正しくスクウェアにコック出来ます(図)。その後で身体を捻転させ、安心してトップを形成すればいいわけです。
'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones(Doubleday, 1966)
Bobby Jonesの本の「トップの作り方」の項を読むと、以下のようになっています。手を前に伸ばしてクラブ・シャフトを地面に水平に上げる(まだコックはされていない)。そこから手首を折ってクラブを垂直にすると90°コックした状態になる(図の1)。手首を平らに維持したまま右45°斜めにし、(鏡に映した場合)シャフトが右肩の突端と重なったように見える角度にする(図の2)。その状態のまま背骨を軸として身体を充分に捻転するとジョーンズ風の正しいトップが完成する(図の3)。
これが正しいコックです。トップの形も安定しています。これを身に着けようと思いました。
「Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の飛距離増プログラム」(tips_153.html)によれば、「練習用の重いクラブを日に10回振ることを三週間続けろ。三週間経てば目立った結果が出るはず」だそうです。私は一日おきにこれにトライすることにしました(中間の日は筋肉組織を安定させる日)。ジョニィミラー風に早めにコックし、ジョーンズ風に左踵を上げながら大きな捻転をし、ダウンスウィングの開始で左踵を下ろし、右肘を右脇につけてダウンスウィングします。
練習マットが目に触れる度に、練習用の重いクラブを振って上図のジョーンズ式正しいトップをマスルメモリに定着すべく努力しています。まだ完全に身についたわけではありませんが、正しく遂行出来るとわれながら素晴らしいボールが生まれます。
【参考】
・「コックの研究」(tips_54.html)
・「コックの全て」(tips_109.html)
・「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)式トップの作り方【詳説】」(02.01, 2023)
(February 16, 2023)
●カップインのイメージを抱いてパットせよ
スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)執筆のメンタルtips集より。
'Golf: The Art of the Mental Game'' 「ロング・パットを成功させるには距離感が最も大事な要素である。ボールがカップインする速度に焦点を当てよ。それが距離感を得るための精度を高めてくれるだろう。 アップヒルのパットでは、ボールがカップの向こうの壁に当たって撥ねてカップインする様子を想像する。これは意識的に余分に強く打つ必要はなく、ボールをしっかり打つことを奨励してくれる。 平らなグリーンではボールがカップに躍り込むイメージ。 ダウンヒルのパットではボールが手前の壁をやっと越えて落ちるイメージ。これはボールをソフトに、しかしおどおどしてショートすることのないストロークを奨励する。 ロング・パットの一般的テクニックは《カップの直径1メートルの仮想の円内に向かって打て》というものだ。問題はこのターゲットが大き過ぎてフォーカスが合わせにくく、いい加減に打ちがちになることだ。そうではなく、たとえロング・パットだとしても実際にカップインする様(さま)思い描くべきである。最善の努力でラインを読み、最善の努力でボールを転がす。よしんばミスしたとしてもボールはカップに近いはずだ。ということは、3パットが減りスコアも良くなるという結果が得られる」 |
(February 16, 2023)
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