March 01, 2022

左踵の研究(身体に優しいスウィングをせよ)

 

[bobby's heel]

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は右のアニメのように左踵を浮かし、左膝を右に寄せてバックスウィングしました。ダウンスウィング開始の切っ掛けは、上げた左踵を地面に下ろすこと。この動作によって、彼は正確無比なショットを放ったのです。

1992年にインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)は"X-Factor"なる理論(腰の回転と肩の回転の差が大きければ大きいほど良い)を提唱しました。それによればバックスウィングで左踵を上げたりして目一杯腰を廻すのは、肩の回転とのギャップを減らしてしまうのでパワーが得られない云々。1975年生まれで1996年にプロ入りしたTiger Woods(タイガー・ウッズ)は、まるで"X-Factor"の申し子のように、両足をべったり地面につけたバックスウィングをし、誰も彼も(プロもアマチュアも)彼の真似をしました。

以後、バックスウィングで左踵を上げる動作は"X-Factor"理論に押しやられ、ゴルフ界からほぼ消え去りました。しかし、若い時のTiger Woodsは身体に柔軟性があったのでべた足でよかったのでしょうが、中年以降の彼の度重なる下半身の故障を思うと、両足べったりはかなり身体の負担になっていたと思われます。

[Snead]

'The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Swing in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Schuster, 2016, $30.00)

この本の著者Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者となっています。彼はJim McLeanの"X-Factor"を「極刑に値する理論」と批難し、われわれゴルファーはBobby JonesやSam Snead(サム・スニード、右の写真)、Byron Nelson(バイロン・ネルスン)、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)など、身体に優しいスウィングをしていた名人たちのスウィングに回帰すべきだ…と主張します。

「私は今日のトップ・プロたちのスウィングが間違っていると云っているのではない。彼らは下半身の回転不足をとてつもない上半身の動きでカヴァーしようと、身体に不必要な仕事を強制している。脚、腰、腰背部の筋肉は限界までストレスを強いられ、腰背部と腰の障害(ギックリ腰)の原因を作り出す。1980年代に始まったこの流行は、バネを巻くように下半身の抵抗によってトルク(捩りモーメント)とスピードを構築せよ…というものだった。この前提は全く間違っており、その悪影響は30年間続いて、PGAツァーとLPGAツァーのプレイヤーたちから、前世代の遺産(よきメソッド)を受け継ぐことを妨害し、同時に彼らの健康を損なわせている。

身体は巻かれるべきバネではない。抵抗によってトルクを生み出したと思っても、回転不足では解き放つべきエネルギーは充分ではない。『下半身で抵抗せよ』という極刑に値する理論は、アマとプロ双方にこれ見よがしに提供されたのだが、それは作り話に過ぎず、全く無益なものである」

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[Sadlowski]

その証左としてBrandel Chambleeは、2008年と2009年の世界ロング・ドライヴ・チャンピオンJamie Sadlowski(ジェイミィ・サドロウスキ)のスウィングの写真を提示します。なんと、ロング・ドライヴ・チャンピオンも左踵を高く上げてバックスウィングしているのです(右図)。Brandel Chambleeは「腰を廻すなという理論の信奉者たちは、ロング・ドライヴ・チャンピオンのスウィングを間違っていると云えるのか?」と食って掛かっています。

私は下半身主導のダウンスウィングをする切っ掛けとして、上げた左踵を下ろすのがいいのではないか…という思惑で左踵の研究を始めたのですが、左踵を上げるのが「身体に優しいスウィング」であるというのは魅力ですし、ロング・ドライヴ・チャンピオンも実行しているテクニックであるなら尚更云うことはないと考えます。

Bobby Jonesはグランド・スラム達成直後に引退していますが、それはハリウッドの映画に出るためと、その後には病気のせいであり身体の故障のせいではありませんでした。Sam Snead(1912〜2002)、Byron Nelson(1912〜2006)、Jack Nicklaus、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)ら、身体に優しいスウィングをしていた人々は息長いゴルフ生活をエンジョイしています。われわれも90歳までゴルフをしようと思ったら左踵を上げ下げすべきでしょう。

私はBobby Jonesほどではありませんが、僅かに浮かす程度に左踵を上げるスウィングを始めました。

【参考】
・Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)「左踵を上げるのは最少限にせよ」(tips_169.html)
・サショウ・マッケンジー博士の「ダウンで左足を一気に踏みつけろ」(tips_187.html)
・Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の 「腰の捻転を抑制してはならない」(tips_153.html)


【おことわり:Sneadの画像はhttps://images.squarespace-cdn.com/、Sadlowskiの画像はhttps://cdn.shopify.com/にリンクして表示させて頂いています】

(March 01, 2022)

ツァー・プロはオープン・スタンスを好む

 

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)はほぼ常にフェードで攻めますから、オープン・スタンスでアドレスするのは理解出来ます。しかし、ツァー・プロのほとんどがオープン・スタンスを好むというのは初耳でした。

[Byron Nelson]

'The Anatomy of Greatness: Lessons from the Best Swing in History'
by Brandel Chamblee (Simon & Schuster, 2016, $30.00)

この本の著者Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)は、PGAツァーで四勝したプロで、現在はThe Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のメインの解説者です。

「多分、ツァー・プロに関する最も大きな誤解の一つは、ターゲットにスクウェアに構えるということだと思う。これはターゲット・ラインと平行な線路の一方に両足を揃えるという説明として好都合であろう。これを信じてどのクラブにもこの方法を当てはめたら、構えに失敗する可能性が高い。

最近の測定機器のお蔭で、ほとんどのプロが(ドライヴァー以外の)全てのクラブでヒットダウンすることが判っている。クラブが下降しながらボールを打てばクラブヘッド軌道はターゲットラインの右に向かう。これがほとんどのプロがオープンに(ターゲットラインの左に向かって)構える理由である。

Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)はその著書'Shape Your Swing the Modern Way'(1976)において『ややオープン・スタンスで狙って構えよ』(右図)とし、『それはダウンスウィングで降りて来る右サイドに左サイドが道を開けるのを容易にする』と云っている。これは長いクラブではさほどでもないが、短いクラブではより重要なポイントであり、(多少の例外を除いて)歴史的に正しい。

正しい軌道を得る以外に、このオープン・スタンスはプロにダウンスウィングでの身体の回転に有利なスタートをもたらす。その回転は打撃の質とスィングのスピードにとってとても重要なものだ。世界レヴェルの名人たちのラグ(レイトヒット)を助けるのは、この回転の速度である。

仮にアドレスで両足がターゲットラインに平行に置かれていたら、あなたはインパクトでターゲットの右へスウィング軌道が向かうことを本能的に察知する。あなたはダウンスウィングで左サイドをクリアしたり急速に回転することが出来ず、軌道が右に向かうのを本能的に修正しようと身体の回転を遅らせ、完璧な手打ちを遂行する。

もちろん、このオープンな構えは両足だけに適用されるものではなく、偉大なプロたちの多くは肩のラインもオープンにする。この構えはダウンスウィングと回転を容易にするための公然の“カンニング”であるが、これは身体の中心から外側へ向かうクラブヘッド・スピードを幾層倍にも増す。

[skater]

両腕を伸ばせば回転は遅くなるが、両腕を身体に密着させると早い回転となる。フィギュア・スケーターを見れば一目瞭然だ。彼らはスピン速度を遅くしたい時に腕や脚を伸ばし、早めたければ身体に近づける。ゴルフも同じで、両腕を身体に引きつける。ダウンスウィング初期に左腕を上体に密着させ、右腕を右脇に近く保つ。これがラグ(レイトヒット)の効果を早期に失うことを防止し、打撃を遅らせスウィングを早め、クラブとボールの正しい接触を生む。アドレスで両足と肩をややオープンにするという単純な行為が、これら全てに測り知れないほどの助けをしてくれるのだ」

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左爪先をオープンにするだけでは駄目です。肩もオープンにしないとプッシュします(経験者は語る)。Byron Nelsonのように両方オープンにすると驚くほど真っ直ぐターゲットに向かって打てます。右サイドのパワーのターゲット方向への突進が容易になるせいで、飛距離も伸びます。

【参照】
・Brandel Chamblee(ブランデル・シャンブリー)の 左踵を上げてスウィング(tips_169.html)
・アドレス時の背中の角度(改訂版)(2/01)

【おことわり:スケーターの画像はhttps://wp.dailybruin.com/にリンクして表示させて頂いています】

(March 01, 2022)



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