January 20, 2022
●体型別スウィングでスコアを減らす
普通のインストラクションは書かれたものであれヴィデオであれ、実際のコーチから教わる場合であれ、生徒個々の体型は無視され、平均的体型を対象にして教科書的に一律に教えられるか、有名プロのメソッドの模倣か、コーチ自身が修得した彼の技を強制するかのどれかではないでしょうか。しかし、ゴルファーの体型は千差万別であり、本当はバックスウィングの高さ、捻転の方法、体重移動の仕方など、体型によって無理なく(効果的に)遂行されるべきものです。
そこへ行くとインストラクターMike Adams(マイク・アダムズ)らが1998年に発表した本'The LAWs of the GOLF Swing'は、ゴルファーの体型を三つに別け、それぞれに相応しいアドレス、バックスウィング軌道などを特定するという画期的な名著でした。今回は、その後Mike Adamsが継続調査・研究した結果を統合して紹介します。
'The Driving Book: Best Instruction Book Ever!'
edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2012, $32.95)
「1) 身長と手の長さを比較するテスト
・身長より広げた両手の長さ(中指から中指まで)が10センチ以下の人
この体型のゴルファーは、正しいダウンスウィング領域に戻すためのトップを自然に形成出来るので、単純に身体を回転させればよい。【回転型ゴルファー】
・身長よりも広げた両手の長さ(中指から中指まで)が10センチ以上長い人
この体型のゴルファーはインストラクターJim Hardy(ジム・ハーディ)が「二つのプレーン」で“2プレーン”と定義した体型に他ならない。身長より長い手を持っているので、両手が肩より遥か上になるトップを形成するため、容認出来るダウン・プレーンにするには、ダウンスウィング初期に水平移動が必要になる。【水平型ゴルファー】
もし、身長に較べ両手の長さが10センチ以内なら、アドレス時に両肩を少し後方に引けばよい。これなら、クラブのフラット過ぎるライ・アングルを回避出来る。
両手の長さが短い範疇に入る人は、肩を丸めて(背中ではない)前方に突き出せば手の短さを補完出来、ボールに近く立つ必要がなくなる。
2) 肘折りテスト
右肘を身体の傍にくっつけた状態で、右手の親指を肩の方に折る(左図)。これは右前腕の長さを知るテストで、右腕を後方に振り上げる時、右前腕が(上腕に較べて)長ければ右肘との関係においてはクラブヘッドをより高く上げられることを意味する。
このテストの結果は、1) 親指が右肩の上を指す【高プレーン】、2) 親指が右肩を指す【中プレーン】、3) 親指が右肩の下を指す【低プレーン】…のいずれかになる。 写真の私の場合は「中プレーン」です。
・高プレーン
このタイプのゴルファーのバックスウィングは、ターゲットライン後方を通過して右肩に向かうのが正しい。
・中プレーン
このタイプのゴルファーは、クラブをバックスウィングでターゲットライン後方に引き、アドレス時の右肘先端を通過する軌道でトップに向かうべきである。
・低プレーン
このタイプのゴルファーは、アドレスした時のシャフトの角度を変えずにそのまま後方に引けばよい。
理想的にはバックスウィングとダウンスウィングは、ゴルファーに適した同一プレーンで往復すべきものである。Rickie Fowler(リッキィ・ファウラー)は低プレーンで上げ、低プレーンで下ろし、Earnie Els(アーニィ・エルス)は中プレーンで上げ、中プレーンで下ろす。
しかし、バックとダウンでプレーンを変えるプロも多い。Bill Haas(ビル・ハース)は高プレーンで上げ、中プレーンで下ろし、Matt Kuchar(マット・クチャー)は低プレーンで上げ、中プレーンで下ろす。
プレーンを変えるのがゴルファーの体型に合っていれば問題ないが、合っていない場合は不正確なショットを生むことになる。
3) 体重移動法の個人差を知るテスト
太腿の前に垂らした両手で一本のクラブ(どれでもよい)を水平に持ち、両足を腰の幅に広げ爪先をやや開いて立つ。クラブが身体から離れないようにして腰を後転・前転させ、その時の体重がどの足にかかるかを確認する。
・体重が後転・前転どちらでも左足一本にかかって変化しない人【左一本柱ゴルファー】(写真)
このタイプの人はアドレスで、右爪先はターゲットラインに直角、左爪先は(ターゲット方向に)やや開く。このオープンにした左爪先が左膝を緩めるのを助けてくれる。ダウンスウィングで伸びた左脚が背骨を伸ばし、左に壁を作って最大の加速を生み出す。
・体重が後転で右足、前転で左足へと移る人【左右二本柱ゴルファー】
バックスウィングの回転軸は右踵の上で確立される(一本目の柱)。ダウンスウィングを開始すると左腰が左踵の上に逆転して、左踵が回転軸となる(二本目の柱)。このスウィングはSam Snead(サム・スニード)風のガニ股を作り出す。
・後転・前転どちらでも終始体重が身体の中心にある人【中央一本柱ゴルファー】
このタイプの人は骨盤の周りで身体を回転させる。バックスウィングで右腰が身体の背後に廻り、ダウンスウィングでは左腰が身体の背後に廻る。
4) 腰の回転速度のテスト【略】
5) 全てのテスト結果を統合してアドレス・ポスチャーを完成させる
全ての回転型ゴルファー(身長より広げた両手の長さが10センチ以下の人)のポスチャーは、クラブ・シャフトと背骨の角度が90°であるべきだ(右図)。【編註:私がこれを実行しようとすると、クラブヘッドのトゥがかなり浮いてしまい、フックやプルを多発する恐れがあるため未だ取り入れていません】
両手の長さが身長より10センチ以上の人(水平型ゴルファー=2プレーン)は、90°よりももっと上体を立てたポスチャーが望ましい。
2プレーン・ゴルファー(両手の長さが身長より10センチ以上長い人)は手の長さを調整するため、スタンス幅を広げるべきである。手の長さ2.5センチ毎にスタンスを1.3センチ広げること。
二本柱ゴルファーでバックスウィングの捻転が容易でない人は、右爪先をオープンにする。
一本柱ゴルファー(2プレーン・ゴルファー)は、左爪先をオープンにする。
・ボール位置
二本柱ゴルファーのドライヴァーのボール位置は左腋の前方。2プレーンの人のボール位置は左肩の外側が適切。
ツァー・プロやロー・ハンデのゴルファー100人をテストした結果、爪先の開き方やボール位置を無視すると、飛距離が27ヤード減り、正確度が37%落ちた。
【耳寄り情報】上記の本には含まれていないのですが、同じ筆者による「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)に見逃せない重要な箇所があります。
「クラブ無しでアドレス体勢を取り、両掌を合わせる。(肩を廻すことなく)手を離さずに左腕が胸を横切るように廻す。あなたの右腕は、自然に次の三つのどれかになる筈だ。
a) 右腕が折れながら持ち上がるのであれば、あなたは(肘折りテストの結果にかかわらず)高プレーンであることを示す。
b) 右腕が後退しつつ下がるようであれば、あなたは(肘折りテストの結果にかかわらず)中プレーンであることを指し示す。
c) 右腕が即座に折れるようなら、あなたは(肘折りテストの結果にかかわらず)低プレーンであることを示唆する」
私は肘折りテストでは中プレーンなのですが、上のテストでは最後の(c)「右腕が即座に折れる」タイプです。練習ラウンドで試してみました。ドライヴァーを低プレーンで打つと引っ掛けが多発しましたが、ハイブリッドとアイアンでは驚くほど正確にボールが打てます。ワン・ラウンドで二回もアイアン・ショットがピン傍30センチについてOKバーディが得られました。「体型別スウィング」さまさまです^^。
【体型別バックスウィングの練習法】
友人にクラブを一本持って貰い、自分のプレーン(高・中・低)のトップの高さで保持して貰って、バックスウィングを繰り返す。友人が手にしたクラブの高さぴったりのトップに慣れるまで繰り返す。
【参考】 (January 20, 2022)
・体型別スウィング(プレーン篇) (tips_137.html)
・二つのプレーン(tips_90.html)
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